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愛しのハク 終章 〜人生の中の幸せな12年編〜

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仕事からの帰り道、マンションに近付くと無意識に部屋の窓を見上げています。そして、そこにハクがいると思うと笑顔になりました。玄関のドアを開けるとすぐそこで待っているはずです。時々待っていないときもあるけれど、それでも。

人間がトイレに入ると、寝ていてもわざわざ起きてきて、不機嫌そうに扉の角に頭を器用に撫で付けたりして、そのうちこちらの尿意につられるのか、猫用のトイレに入って用をたします。ハクとの暮らしは、口元が緩む出来事の連続でした。一日残らず、微笑みをくれた愛しのハク。



去年の夏、盆のさなかに駆け込んだ病院で腎不全と診断、そのまま入院してから二週間、一度もこの部屋に戻ることがなくハクは永眠しました。週末には一時退院ができるかもしれないと希望を抱いていた金曜日の朝でした。

入院中、毎日見舞いに行きながらいろいろなことを考えました。衰弱しているハクにどこまで治療を続けるべきなのか、できることは全てしたいと思う自分の気持ちは本当に正しいのか。何が最善なのかわからず、ずっと気持ちが揺らいでいました。
『ハクちゃんもまだまだ美味しいもの食べたり、一緒にいたいと思ってると思いますよ。』と主治医の先生は静かに言いました。その言葉に頷いたら涙が床にポトと落ちました。

大学生になった年、1997年の秋、20才の時にハクはやってきました。ハクと暮らした12年間は、人生でもっとも多感で、もっとも雑多な時期だったでしょう。親元を離れた一人暮らしで、昼夜の境目もない生活を過ごしていました。

ハクがまだ元気だった頃から、いつかは訪れる別れに怯えていました。不安が訪れた時は、ハクのふかふかの体毛に顔を埋めて、両腕で体を強く抱きしめながら『ずっと一緒にいようナ。』と口に出して呟きました。やがて、全ての生き物は死を迎えるという動かしようのないゲンジツを思い、自分が先に死ぬよりも良いのだと気持ちを鎮めていました。



ハクが永眠した日も、翌日霊園に連れて行った日も、友人が付き添ってくれました。あやKはカラフルな花でバスケットの棺をデコレーションをしてくれ、あきCはハクの大好物を詰めたリボンかけのお弁当を棺に入れてくれました。

あの真っ白でふかふかとした体に二度と触れることができないと思うと、悲しくて悲しくて霊園からの帰り道は声を上げて泣きました。

しかし、予想もしなかったことに、あらゆる事象がハクとの別れを辛いだけにはしませんでした。
信頼できる先生方にハクを診てもらえたこと、諦めていた輸血が一度は叶ったこと、病状を心配してくれる友人達がいたこと、ブログに沢山のコメントをいただいたこと。友人達の贈ってくれた花がこの部屋で柔らかに香っていたこと。

もう息をしていなかったけれどハクとこの部屋で一晩一緒に眠れたこと。
ハクが可愛いハクのままで旅立ったこと。

冬が来れば、ハクのいない布団の隙間を持て余すし、ファンヒーターの前のハクの定位置を眺めてしまいます。台所に立てば、さわさわと足元にまとわりつく感触が恋しくなります。腕に点滴をしていたのに遠慮して、入院中はハクを抱きしめなかったけれど、体の半分でも抱きしめればよかったと後悔しています。



ハクはブログにもよく登場していました。ハクはもうこの部屋にいませんが、ハクの話題が出ないこの場所(ブログ)がずっと奇妙でした。たとえブログ上でも、ハクという猫がいたことを誰かが知っていてくれるのは本当に幸せなことだと思っています。だからいつかはここでハクの最後の記事を書きたいと思っていました。寂しさと向き合うのが嫌で書けなかった記事も、半年が経ち、ようやく報告することができます。

ハク。お前のおかげでずっと幸せだったよ。
ありがとうありがとうありがとう。

また、会おうね。


本日の1曲
恋はいつも幻のように / ホフディラン
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▼ 関連エントリー
ハクが入院している間『デイ・バイ・デイ』で病状の経過を毎日報告していました。
8月16日から8月31日までの記録は8月のアーカイブからご覧いただけます。
●デイ・バイ・デイ 8月のアーカイブ

ハクとの出会いのエピソードや暮らしの様子は「愛しのハク」カテゴリーでご覧いただけます。
●リヴィング・トーキョー 「愛しのハク」カテゴリー
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2007/11/18 『愛しのハク 〜ぼく達のささやかな10年編〜
2007/06/20 『愛しのハク 〜クッションのあたたかな凹み編〜
2006/12/11 『愛しのハク 〜純白のファッショニスタ編〜
2006/11/26 『愛しのハク 〜我が家の冬支度編〜
2006/11/09 『愛しのハク 〜のっぴきならないお出かけ編〜
2006/10/27 『愛しのハク 〜オレ関せず編〜
2006/10/11 『愛しのハク 〜ハクの宅急便編〜
2006/09/29 『愛しのハク 〜研いで、候。編〜
2006/08/11 『愛しのハク 〜3時間のショートトリップ編〜
2006/07/18 『愛しのハク 〜人知れずタフネス編〜
2006/07/04 『愛しのハク 〜勝手にしやがれ編〜
2006/06/11 『愛しのハク 〜飼い猫も潤う6月編〜
2006/05/03 『愛しのハク 〜おかか純情編〜
2006/04/10 『愛しのハク 〜違いのわかるオトコ編〜
2006/03/16 『愛しのハク 〜眠れぬ夜は君のせい編〜
2006/03/01 『愛しのハク 〜MY CAT LOST編〜
2006/02/11 『愛しのハク 〜ルームメイトは白猫氏編〜

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11 Responses to “愛しのハク 終章 〜人生の中の幸せな12年編〜”


  1. 1サチエ

    大切に大切に思える存在がいる人生はとっても幸せです。
    tasoさんは、ハクは、きっととっても幸せな毎日を過ごしたことでしょう。
    ハクのこともあり、個人的にも去年は、生きることについて改めて考えた年でした。

    生身のハクに会う事は叶わなかったけど、ここでハクに出会えて、
    わたしにも幸せな時間を分けてくれたtasoさんに感謝しています。

    ただ、願わくばこれからもたまにはここでハクに会いたいです。

  2. 2のぶ

    ごぶさたしております。

    ハク氏が入院してしまったこと…ハク氏が残念ながら他界してしまったこと…
    記事で追いかけながらも、何も言葉が出てきませんでした。

    それは、ずっと受け入れられずにいたウチのチビニャンとのお別れと
    ダブってしまっていたからだと思います(私事で恐縮です)
    taso氏が書いてくれた“終章”を読ませてもらえたおかげで
    ようやく私もチビニャンの死とちゃんと向き合えたような気がします。
    淋しさと一緒に、目を背けてしまっていた幸せな時間を
    思い出すことができて、すこしだけ気持ちが軽くなれた気がします。

    taso氏、ハク氏、ありがとうね。

  3. 3ねおや

    ご無沙汰しております。
    こちらへ訪問する度に、どこかでハク氏の姿を探しておりました。
    間接的ですが、二ガオのエントリーを見た時は久々の再会にホッコリしたものです。

    tasoさんのブログのアイコン的だった“愛しのハク”(すみません、勝手にそう思っております…)最終章しかと読ませていただきました。
    悲しい、でもとても優しい最終章でした。

    私も、いつかまたtasoさんの心の中にいるハク氏にひょっこり会える日を願っています。

  4. 4taso

    >サチエさん
    いつもハクの話を聞いてくれてありがとう。
    生き死にについての迷いは、答えが出るものではないけれど、
    親身になって聞いてもらえたことでずいぶん助けられました。
    またハクの秘蔵写真を蔵出ししようかな。

    ・・・こんなことを書いていると、猫に触りたくなってきました。むむ。
    (猫カフェに行く人の気持ちが初めてわかった気がします。)

    >のぶさん
    入院している間、元気のないハクの様子を見るのは辛かったけれど、
    それでも毎日顔を見られることが嬉しかったです。
    毎朝、病院に近づくにつれ早足になってついでに鼻息も荒くなりました。

    一緒に暮らしてきた犬や猫との幸せな日々を思えば、
    その辛さからは逃れられませんね。
    それだけ今まで幸せにしてもらったということで、
    残された人はそれを受け入れざるを得ない。
    妙なたとえですが、自分が先にいなくなってハクが路頭に迷うよりも
    いいじゃないかとも思います。飼い主だし、人間だからです。

    素敵な思い出を思い出せないことはなんだかもったいないぞと。
    だからいつまでもハクのことを思い出してクスッと笑っていたいです。

    のぶニャン家のチビニャン、ハクをよろしく。

    >ねおやさん
    この記事は、昨年中から書き始めていました。
    去年起こったもっとも大きな出来事だったので、
    年内に書いてしまいたかったのですが、書いてはやめ、
    としているうちに2月になってしまいました。

    今も時々友人達とハクの話をします。
    ハクの話をするというより、ハクとのエピソードが会話の中に
    自然に入り込むという感じです。元気だった時と変わりませんね。
    そんな調子なので、またひょっこりハクのことを書くかもしれません。

    ハクの訃報をお伝えしたデイ・バイ・デイの記事で、
    ねおやさんが書いてくれたハク氏宛のコメント、本当に嬉しかったです。
    心があたたかくなりました。
    お礼が遅くなりましたが、ありがとうございました。

  5. 5Inucco

    ハクのいないこの場所が不自然でした。
    ハクの話題は出ずとも、日々の生活の中でハクを感じ、ハクを想っているであろうTasoを気にしてました。

    悲しみが大きいほど、受け入れるのには時間がかかります。

    tasoの多感な時代をともにすごしたハク(きっと誰も知らないtasoを知ってるんだろうな)。
    tasoの心の声をいつも聞き流してくれいていたハク(さりげなく横切りながら横目で見てたり)。

    私はハクを思い出すと、なんか笑っちゃいます。
    優しい気持ちになります。

    忘れないよ。

  6. 6パピ

    ご無沙汰しています。
    終章は、読みながらハクちゃんの入院生活を思い出し
    心がキューっとなりました。

    でもtasoさんの撮るハクちゃんの写真を見ていたら、
    愛しのハクの文章をすぐに思い出せたり
    実際は触れたことがないのに、手を伸ばしたらフワフワ柔らかい
    ハクちゃんをなでることができそうな気持ちになります。

    トイレットペーパーをいたずらしちゃった写真が特に好きです。
    エピソードではご実家でキノコを夜中に枕元に運んできた話、
    何度想像しても顔がほころびます。

    またハクちゃんに会いに、「愛しのハク」に遊びきますね。

  7. 7taso

    >Inuccoさん
    本当にこれまで、ハクに聞き流されながら色んなことを話したと思います。
    気分が塞いでて何もする気が起きないときには『めしまだかよ。』って思ってただろうけど、
    そんな無関心さに助けられていました。
    ハクが部屋のどこかにいてくれるだけで随分安心できた。
    自分以外の人や動物が一緒の家にいるのは幸せなことだね。

    ハクのことを思い出したときは、どうぞ笑っちゃってください。
    毎日人間を飽きさせない、面白いやつだったんだから!

    >パピさん
    去年は訃報の記事にあたたかなコメントをありがとうございました。
    あの時お返事はできませんでしたが、いただいたコメントは今でも読み返しています。
    (ハクがピットインしていた緩衝材、棺に入れようか本気で迷いました・・・がやめました)

    キノコの話は「ハクの宅急便」編ですね!
    動物と一緒に暮らしていると本当に色んなエピソードがあるものですよね。
    ハクとの暮らしは、猫の生態を思いっきり感じられた幸せな時間でした。

    ハクの手触りは、なかなかのものでしたよ。
    柔らかくてあったかくて、顔を埋めてモフモフとするのが最高です。
    飼い主は最高でも、ハクは少し迷惑そうでした。

  8. 8ファーファ

    ハクがいなくなって数カ月経ちますね。
    気まぐれに出迎えてくれたハクが大好きでした。
    今は出迎えてくれることもできず、なでることもできないけど、私はtasoの家に行くと今でもハクの存在を感じていますよ。

  9. 9taso

    >ファーファさん
    未だに爪とぎがそのまま立て掛けてあるし、時々洋服にハクの毛がついていたりします。
    夜、部屋でベッドに横になってると、キッチンの方からハクが
    ノソノソとベッドに向かって歩いてきそうな気がする。
    そんな時は聴こえるはずもないハクの足音まで聴こえるような気がします。
    カサコソという音がしたら無意識にハクの仕業だと思ってしまうしね。
    (じゃ、さっきのはなんの音だったんだ!?)

  10. 10ちんみん

    最後の最後まで、愛情深く、看取られて、
    はくちゃんは幸せだったんじゃないかな、と
    想像しています。

    また、はくちゃんに会いたいね!

    会えないとさみしいね。
    だから、
    「愛しのハク」が、もしも、
    まとまって本になったら
    ぜひ購入したいなー、なんて
    想像してます・・・。

  11. 11taso

    >ちんみんさん
    ブログをやってて、ハクとの暮らしがここに残っててよかったと思ってます。
    あとから思い出して書くのではなくて、なんでもない日の文や写真が残ってたことが。
    だから最後に入院した時も、その日しか書くことのできない記録を
    ずっと残したいと思って記事を書いていました。

    ふとした時にハクがいないことが寂しくなります。
    週末はよく一緒に居眠りをしたなぁ。
    次に会ったらまたハク枕で眠りたいな!

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