映画(ハル)
監督・脚本:森田芳光
製作・企画:鈴木光
プロデューサー:青木勝彦、三沢和子
キャスト:深津絵里、内野聖陽、戸田菜穂、宮沢和史ほか
主題歌:『TOKYO LOVE』:THE BOOM
1996年/118分/カラー/日本
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チャットの様子が画面いっぱいに映し出されたり、電光掲示板の文字が挿入されたり。そんな文字の演出はどこかアナログ感が漂っていて、インターネット黎明期の感覚を懐かしく思い出させる。
『(ハル)』が公開された1996年は、インターネットがこれから普及しようとしていた時代だった。当時は目の前のキーボードで打った文字を送信することも、それを誰かが受信することも、いまいち理解できない不思議な現象だった気がする。
“ハル”(内野聖陽)は、興味本位で覗いたパソコン通信の映画フォーラムで “ほし”(深津絵里)と出会う。ハルとほしは(おそらく大多数の人々と同じように)普通の生活を送っている男女。ハルは東京に暮らすサラリーマンで、ほしは職を転々としながら盛岡に暮らしている。
華やかでもなく金持ちでもなく、一見穏やかな暮らしをしている人にも、人の数だけ習慣があり、興味がある。そして、できれば誰かに聞いてほしいことを抱えている。ふたりは生活の出来事や悩みをメールで打ち明け合うようになっていく。
インターネットがこれほど身近になると、かつてはあった切実さが欠けてくる。目の前のディスプレイに向かって、ここに自分がいることを誰かにわかって欲しい、と切なる願いを込める機会は減ったのではないか。2009年の我々はいちいちそこまで考え込まない。思いを溜め込む前に送信ボタンや公開ボタンでそれを吐き出してしまう。
それに、姿の見えないやりとりでは、文面から相手を想像するものの、相手が実在するという実感が希薄になってしまう。(このブログを読んでくれている人の姿をうまく想像できないのと同じように)
だからハルとほしが初めてお互いの姿を確認するシーンは、緊張感に溢れている。毎日のようにメールを交換した相手が本当に実在することを遠目に確認したシーン。あまりにも控え目で、短時間の接触ではあるけれど、それは目の覚めるような感動を与えてくれる。
インターネット無くしてはかなわなかった出会いもある。ハルとほしのように。
『(ハル)』という映画は、誰かと思いを共有したいという切実さに満ちている。そして、回線に接続中の大勢の、そのうち稀有な何人かが自分のメッセージを受け取ってくれるなら、本当の思いを話したい。
ハルとほしが築いた信頼関係は、今より更にインターネットが発達するであろう未来においてまで、多分、まるで色褪せることはない。インターネットがいくら発達しようと、そもそもインターネットの有る無しや、姿の見える見えないに関わらず、人間の求めるものはきっと、ずっと変わることがない。
本日の1曲
Honeysuckle Rose / Holly Cole Trio
確かに、その映画にはそんな魅力があり、森田氏はいい映画監督だよね。地元のコンビニのぴあでこの映画に上の紹介文が書かれてあったら気になって観たくなるかも・・・。
世界堂で売ってる工場生産のキャンバスでなく・・個人名義の手作りのキャンバスのような文章だね。
思わずなにか色をつけたくなるよ・・。かなりの褒め言葉なんだけどうまく伝わるかなぁ?白い文章。
褒めすぎたかも・・。まぁいっか。
>tacikawan boys likeさん
久々すぎるエントリーなのに、気付いてコメントをくれてありがとう! 久々だから褒めすぎたみたいだけど。
『(ハル)』はずっと大好きな作品だったけど、もう長い間観てなかった。
この間友達と好きな映画の話をしていて、また観たくなってDVDを買いました。
思い入れが強くて、文章をかなり書き直したけど、魅力が伝わっているかどうか・・・。
思うに、ハルとほしがどこにでもいそうな人という設定なのがいいんだと思う。
強烈な個性もなく、癖のない市民というか。そんな人同士が日常生活レベルで繋がるのはとっても貴重なことだと思う。
近日、また森田作品が公開されるらしいよ。『わたし出すわ』だったかな、タイトル。
映画「(ハル)」は taso氏と付き合うにあたり、キーワードになるアイテムだと思っています。
私も最近、「人と繋がる」ことについて妄想したり、考えたりすることが多いです。今の生活は悩みが多いからね。(苦笑)
ちなみに森田監督の「39 刑法第三十九条」が見てみたいです。
>pinkbear氏
この映画を好きなこと知っててくれたんだね。
さぞかし厚かましく熱く語ったことがあるのでしょう。
今までブログに書かなかったのが不思議なくらい、
本当にいつまでも色褪せない名作だよ。
『39』も見たけど、『(ハル)』と『家族ゲーム』が偉大すぎてあんまり憶えてない。
そういえば大学生の時は、森田組に入りたいと思ったことがあったなぁ。
この映画をtasoに勧められて観てよかった。
決して暗いテンポで進んでいくわけではないんだけど、せつなくてジワジワと感動が後から追ってきた感じがしました。
“ハル”と“ほし”がお互いの存在を確認するシーンが私も印象的。対面して会わないことは二人の関係が変わらないようにと願っているようにも感じたよ。ほんとに余りにも控え目で・・・
インターネットは便利なものであるけど、人間の存在を薄めてしまうものかもしれない。でもそのシーンは、二人がお互いに生身の人間であることを深く感じたのではないかな。
それはまたパソコンを通じて知り合ったからこそ、なのかもしれないね。
>ファーファさん
今はインターネットで情報を仕入れるのが当たり前になっていて、
その情報をきっかけにしてどこかに出掛けたり、何かを購入したりしてる。
でも同じように自分が誰かに影響を及ぼしていたとしても、
それを実感できない、という奇妙な面もある。
インターネットは「人間の存在を薄めてしまうものかもしれない」けど、
『(ハル)』は、そういう奇妙さとか、可笑しみみたいなものがうまく描かれていると思う。
(ハルがほしの話していた映画館に行くシーンとか)
淡々としていて大袈裟でないのがいいんだよねぇ。
これからも時々観たくなる名作(!)だと思ってます。
なんか小学生の時、しんけん(漢字が分からない)ゼミの企画で文通してた女の子のことを思い出した。
恥ずかしくて友達の誰にも言えなかったし・・写真が送られてきて・・かわいいって思ってさらに恥ずかしくなってたことを思い出した。
俺は・・自分の顔に自信無くて帽子を深くかぶった写真を送ったよ・・・確か。
明日も仕事かぁ・・寝よ。
明日も仕事かぁ・・・ビール飲んでから寝よ。
>tacikawan boys likeさん
大人になるとわかりやすくて手っ取り早い展開を望んだりするけど、
本当は関係をゆっくり育てたいと思うピュアな気持ちがどこかに残ってると思う。
しんけんゼミの文通、見た目によらずピュアな(!)君らしいエピソードで、
人って子供の頃から人格変わらないんだな、と思ってしまったよ!
今日は久しぶりに麻雀やてよ。
負けたけど、アヤと空デのイケメンとtasoと学生の頃やっていたのを思い出したよ。
文通は中学に入ってバスケ部に好きな子ができたら忘れちゃったよ!中学に入ると女はブラジャーするんだよ。
t.rexの20センツリーボーイが流れたよ!
感動した!小泉風
母さんのブラは茶系だったから。
音楽が流れなかった・・。
tacikawan って立川と白鳥(swan)を掛けてるんだよ。
才能ある君へ
立川の少年たちより
おやすみ
>tacikawan boys likeさん
麻雀懐かしいね。
今では4人揃って打つこともなくて、もっぱらiPhoneアプリで
遊ぶだけになってしまいましたよ。だから羨ましい。
麻雀ほど面白いゲームってないと思う。
あ、あと。
思春期にT-REXの曲が流れた瞬間ってのは誰にでもあるんだと思うよ!
ハル、は、私もみました。
とても好きな映画です!
あと、パソコン創世記の、思い出といえば、
後藤久美子がでてた、「空と海を越えて」というドラマ。
誰か見た記憶ある人いますか?
ずっと映画だと思ってて、
今回調べたら、ドラマということがわかった。
パソコン通信、という世界をはじめてのぞいて、
新しいものに触れた衝撃をいまでも覚えている。
いまは、ネットなんて当たり前になっちゃったけど、
考えてみれば、大学卒業するまで携帯電話もってなかったし、
初めてファミコンやったときは衝撃だったなー。
>ちんみんさん
そのドラマ、残念ながら知りません・・・!
インターネットで調べたら連続ドラマではないんだね。
その頃はインターネットがこんなに生活に欠かせないものになるなんて
まったく予想できませんでした。でもちょうど大学生の頃(97年くらいから)、
インターネットが一般家庭に普及し始めて得体の知れない新しい技術に
自分がどんどん取り込まれていくのは高揚感があったな。
ドラマといえば、『彼女たちの時代』も素晴らしかったね!!(これも深津絵里だ)
都市生活者の閉塞感を地味に描き続けるドラマがまた見たいよ。