愛しのハク 〜研いで、候。編〜

猫の爪研ぎは頻繁に行われる。我が家では部屋と部屋との境に爪研ぎ板が置かれている。そこを通り掛かるたびに爪を研ぐのは彼にとっては自然の成り行きのようだ。愛猫ハク氏、今夜も絶好調である。

桐の爪研ぎ板は両面にギザギザがついていて、洗濯板のような佇まい。木のクズを片付けながら時々裏返し、数カ月に一度買い換える。猫氏は細長い板の上に前傾姿勢で乗っかり、真剣な表情で一心不乱に爪を研ぐ。

ガリッガリッ!ガリッガリッ!
一定のリズムを保ちながら数十秒。一仕事終えれば、フンッと鼻息を吐き出しすっきりとした表情だ。時には片足を乗せ、男らしいスタイルを見せてくれる。それは大工がのこぎりで木を切る姿に似ている。

時にはその大きな音のせいで、観ていた映画を巻き戻さなくてはならなかったり、電話の向こうの友人にウルサイと小言を言われることもある。

以前住んでいた部屋の扉には爪研ぎ跡がくっきりついていた。退室の時不動産屋の移動に合わせてうまくスライドを繰り返してごまかしたつもりだったが、後日しっかり10万円の請求が来た。当時まだ猫氏は子供だったから仕方がない。今では爪研ぎ板以外のところでは研がなくなった。

1ヶ月に1度くらいの割合で猫氏の爪を切る。猫用の爪切りもあるが、我が家では飼い主と兼用で普通の爪切りを使っている。
肉球を押すと普段は「収納」されている爪が姿を表す。カギ状になった爪の先端数ミリを切る。猫氏は掴まれた手を早く引っ込めたくて仕方ないらしく、綱引き状態である。これは昔、誤って肉まで切った自分が生んだトラウマである。
だから爪切りはスピーディーになされなくてはならない。嫌がる猫氏を抱きかかえ、陽気に歌なんぞを歌いながらも、目だけ目茶苦茶必死な飼い主である。

猫の爪はある程度の時間が経つと表面がめくれて剥がれ落ちる。爪の抜け殻のような物体がたまに床に落ちているのだ。
日夜躍起になって爪研ぎに勤しんでいる猫氏を見ていると(外敵が襲ってくるわけでもなかろうに)と思ったりもする。


本日の1曲
Knock Me Out / Asparagus


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