愛しのハク 〜ハクの宅急便編〜

友人宅の猫氏は獲物に果敢に挑み、よく「お土産」を持ってきた。ある朝彼が目覚めると隣にハトが横たわっていたらしい。羽をバサッと広げたハト氏。猫氏も大物をしとめて興奮していたのだろう、大きなハトをわざわざ家に持ち帰ってきたのだ。彼もお土産には慣れているつもりだったが、さすがにハトには驚いたらしい。

猫は獲物を取ると、狩りの成果を見せる習性があり、褒めてもらいたい一心でお土産を持ち帰る。しかしこれが人間にとってはあまり嬉しくない。木の実とか、果実ならよいのだが、大抵は生き物の死骸だからだ。

ある友人宅の猫氏は風呂場からスポンジを持ってきて、おもむろに飼い主の前に置き、その前に立って自慢げに雄叫びをあげる。バスラックにスポンジを戻してみても、その恒例行事は何度も繰り返される。家猫の場合、持ってこられるものは限られているのだけど、特にスポンジはお気に入りだったようだ。

ところで、我が家のハク氏の場合。実家に帰省した際、朝目覚めるとなにかが首の周りに散らばっていた。起きてすぐに顔の近くに異物感を覚えるのはゾッとする。おそるおそる手を伸ばし、確かめるとそれは干しシイタケだった。

干しシイタケ?
肩から首の付近にいくつもの干しシイタケが撒かれていた。まるで棺桶に入れられた死体みたいに。起き上がるとシイタケはパラパラと布団に落ちた。

そういえば前日、愛猫ハク氏はリビングの隅でゴソゴソと何かを漁っていた。今思えばその時、干しシイタケを漁っていたのだった。干しシイタケの入った袋はお歳暮やお中元の贈答品の山の中に埋もれていて、家族ですらその存在を忘れていた。ダシの匂いに誘われた猫氏はしばし干しシイタケに夢中になっていた。

猫氏はわざわざ隣の部屋から、しいたけを運んできた。分厚いビニール袋を根気よく破り、ソファを飛び越え、部屋を出て、廊下をスタスタと歩き、ドアをすり抜けてベッドに上がり飼い主の首元にしいたけを置き、また隣の部屋に戻る。これだけの量を運搬するとなると何往復もしなくてはならなかったはずだ。

彼にとってはとっておきの素敵なプレゼントのつもりだったのかもしれない。真夜中の猫氏のさまを想像してみる。彼は真っ暗な廊下をしいたけを咥えて往復した。夜を徹しての運搬作業で疲れきったのだろう、猫氏はスヤスヤと寝息をたてていた。


本日の1曲
世界 / Chara


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