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愛しのハク 〜クッションのあたたかな凹み編〜

一人暮しで猫を飼っていると言うと、『じゃあ家に居ないときはどうしてるの?』と聞く人は多い。不思議と猫の品種や名前の話にはなりにくい。ハクと暮らして10年、何度このやりとりが行われただろう?

それに留守中の飼い猫の様子は誰にもわからないから、頻繁に繰り返されるその質問にはいつまで経っても答えがでない。一体何をしているんだろう。

外出する時は、キャットフードと水の量をチェックし、必ず猫の姿を確認してから家を出る。それから(聞いていようがいまいが)猫に向かって『行ってくるよ』と声を掛ける。

ウィークデイには最低でも12時間は家を空ける。出掛ける時にはそれなりに気を配らなくてはいけない。猫が落ちないよう洗濯機の蓋を閉め、いたずらされたくないものは隠すか片付ける。部屋の空気が篭らないように浴室の窓を開け、カーテンとブラインドで室内の明るさを調節する。そうした一連の流れは身に染みついていて、身支度のついでにほとんど無意識に行われる。

ハクにとって留守番は普通のことであり、出掛ける寸前に甘えて困ることもほとんどない。今や、鞄を持って玄関に向かう飼い主をちらっと横目で見遣るのみで大して気にしている様子もない。・・・慣れたものだ。

玄関のドアがばたんと閉まった時から、半日に及ぶ猫の留守番が始まる。こちらが自動改札を通り抜ける頃、彼はおもむろに居眠りを再開したり、思い付いたように用を足したり、昨日と違うフードの味見を始めたりするんだろう。
人間は仕事、猫は留守番。なにしろハクの留守番歴も今年で10年になる。

しかし部屋に残された愛猫を思うと、ちょっと落ち着かない気分になるのは今も変わらない。誰も居ない部屋に爪研ぎの音を響かせ、時折部屋を迂回して遊び相手を探しているんだろう。
猫氏は消し忘れた家電のスイッチを切ってくれるわけではないし、なにかあったら携帯に電話をよこすわけでもない。ハクと暮らしだしてから外泊は滅多にしなくなり、用事が済んだらなるべく早く帰る人になった。

ある夜、暫くの間ハクの姿を見ていないことに気付いた。名前を呼んでも返事がない。心配になり姿を探すと、狭い隙間から出られなくなって暗がりでじっと息を潜めていた。こちらの手助けがなくてはどうにも脱出不可能な事態だった。
友人氏は『そういうのは、誰か居る時にやるって決めてんだよ』とちょっと感心したように言った。そうか。「成功するかわからないチャレンジ」は飼い主の在宅中にやっとくルールを会得したのか。

玄関を開けると、いつもそこにハクが待っている。足音がするたびにここに来ているのか、飼い主の足音を聞き分けられるのか。
さっきまでハクが寝ていたと思われる温かなクッションの凹みに手を当ててはなんとなく彼の留守番を想像したりする。


本日の1曲
今日はなんだか / SUGAR BABE


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