センバツ

最初に自分がまったくの野球音痴である事を告白しなくてはならない。プロ野球中継を真剣に見た事がない。あろうことかつい最近までセ・リーグとパ・リーグは常に対戦していると思っていた。野球ファンのみなさんは好きな球団がリーグ内でしか試合を行わないのは欲求不満にならないのであろうか?と真剣に疑問に思っている。野球のルールはおろか、そのシステムを理解できていない。

昨夜テレビ番組で春のセンバツに出場している沖縄県立八重山商工のドキュメンタリーを見た。離島にある高校の初めてのセンバツ出場。島の野球人口は少なく、部員もレギュラーを2倍した程の人数しかいない。

イガグリ頭の伊志嶺監督は当初、島の子供達に野球を指導していた。選手の成長に合わせるかのように指導の場を移し、八重山商工の監督に就任した。野球部員が小学生の頃からずっと野球を教え続けていることになる。
しかし高校の教員ではない為、指導の報酬として監督氏に支払われる金額は月額5万円。驚くべき事に朝と放課後の練習時以外はゴミ収集の仕事をしているという。
早朝の練習前にはプレハブの部室で大音量で長渕剛の歌を聴くのが日課。「生き様が自分と似ている」という。間違いなく長渕剛は監督の活力になっているようだ。

彼は野球にのめり込むあまり、家族を顧みず離婚。今は一人で借家に住んでいる。監督氏の自宅の壁には息子達の写真が飾られていた。長男は20歳の若さで他界、次男と三男は高校球児だったが甲子園出場の夢は叶わなかった。
息子が成し得なかった夢を父親は叶える事が出来た。彼はそれを誇らしく思っているだろうか。なんとなく後ろめたい思いもあるのではないだろうか。そんな表情をしていた。

昼にインターネットをしていると、ニュース速報に試合経過が表示された。(あ、昨日見た高校だ)とすぐにテレビの前に行き画面を睨む。見始めた7回の時点で横浜高校に7-1のリードを許していた。点数を見る限り逆転は簡単ではなさそうだ。横浜高校は野球の名門らしく、素人目にはその試合はもう終わったかのように見えた。

しかし8回の攻撃で八重山商工は一気に5得点をあげた。1点差に詰め寄った。テレビの画面に向かって無意識に声を上げてしまう。スポーツに疎い自分がいつもそうして声を上げてしまうのは決まってスポーツを観戦している時だ。

一丁前に手に汗を握り9回裏の攻撃を見守る。『2アウト、2塁3塁。2塁の走者が帰ればサヨナラです!』重大な局面である事に間違いなさそうだ。
打った!走者が走り出す。そして打ち上げたボールを相手校の選手がキャッチすると横浜高校の部員達が一斉にグランドに飛び出してきた。ポカンとその様子を眺めるが、どうやら試合は終わったようであった。終わる瞬間もわからないとは情けない限りである。

彼らを見る度、いろんなことを犠牲にしているんだろうなぁと思ってしまう。自分が経験した世代の彼らだけに、感情移入してしまうのだと思う。自分の高校時代のどうしようもなさを思い出したりする。そしてグランドを走り回る選手達に釘付けになってしまう。


本日の1曲
エントランス / ASIAN KUNG-FU GENERATION


続けて読みたいエントリーたち

0 Responses to “センバツ”


  1. No Comments

Leave a Reply