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恋する家庭教師

高校受験の為に予備校に通い、心配した家族は自分に家庭教師までつけた。高校に入学するまでの約1年間で2名の家庭教師が我が家に派遣されて来た。
彼等は地元の静岡大学に通う学生だった。主に教えてもらったのは理数系であった・・・と思うのだが、実のところあまり勉強の記憶が無い。

週に5日は大手予備校に通い、家庭教師は週1日。家庭教師がやって来ることははっきり言って息抜きに近かった。一人は30分程の道程をバイクでやって来た。一人は国道沿いの隣街からママチャリにのってやって来た。ママチャリ氏は熊のように大柄で、やけにサラサラしている長髪だった。

ママチャリ氏は志望の島田高校の出身だった。ほんの数年前に高校を卒業したばかりの教師氏は高校時代の思い出を色々と話した。受験勉強に辟易していた自分は早く高校生になりたくて堪らなかった。勉強そっちのけで紅茶を飲みながら雑談を繰り返していた。

『ジャラって言う先生がいてさ。俺はジャラのおかげで化学が好きになった。』
ジャラは生徒の出席番号入りのプラスティックの札をクッキーの缶に入れ、それをジャラジャラかき混ぜながら授業をする。不意打ちのように札の番号で生徒を指名し、質問に答えられなければ羞恥の言葉を浴びた挙げ句に教室から追い出される。
そして翌春、高校に入学するとまんまとジャラが化学の担当になり、聞いたままの光景が繰り広げられていた。これが世に言う”生理的に苦手なタイプ”というものなのだろう。そしてジャラのせいで化学が大嫌いになった。

そしてあろうことか家庭教師氏は我が家での授業中に突然いなくなったことがある。その日はなんだか彼はソワソワしているように見えた。そして授業中であるにも関わらず、いきなり部屋を飛び出して行った。
中学生ながら、いきなり部屋を飛び出すほどの原因は恋愛しかないだろうと思った。映画研究会に所属していた彼は、教え子の自室で映画撮影を敢行したことがあった。その日は我が家に大学生のグループが訪れて一日中撮影をしていた。監督である家庭教師氏が”女優”として出演していた清楚な女子大生に恋をしているのはなんとなくわかった。

彼はママチャリでどこかに暴走していってしまった。家族も『あらまぁ』と怒る様子でもなかったので大事には至らず、翌週も彼はやってきた。
彼女との仲がどうなったのかは聞かなかったけれど、淡い大学生の恋愛を垣間見たエピソードだった。


本日の1曲
Daigakusei / ZAZENBOYS

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