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中原中也

その時求めていたものは孤独な芸術だった。
書店の棚で手に取った中原中也全集には年表や写真などの資料がたくさん載っていて、横から覗き見た友人は『資料が多くていいね、その本。』と興奮した面持ちで優しく微笑んだ。本好きの彼女が中原中也の詩を教えてくれた。

学生時代に襲った憂鬱は予兆もなく突然目の前に現れ、長きにわたって精神を蝕んだ。とにかく希望のない毎日で、その時の自分が見ていたものを他人に伝えようとしたところで容易ではない。誰にも理解して貰えないと思っていたこの気持ちを「既に体験した人間」がいる。そう知ったことはなによりの救いだった。




窓ガラスに映る情けない自分の姿を見るたびに、ただの物体になってしまったような感覚が襲った。全てを即物的に感じ、聞こえる音にも一切の抑揚を感じなかった。
もはや自分には何も残されておらず、この世で自分の存在だけが辛気臭かった。

周りはきらびやかに見えた。世の中は自分と接点を関係のない所で進んでいて、誰一人として立ち止まっていないように思えた。
皆は少しずつ現在位置を変えて移ろいながら、幸福を手にしているように見えた。




中原中也の詩作に自分と同じ種類の人間の存在を感じることができた。絶望を抱えて生きた詩人の言葉は実感に満ちていて、希望がないことは何にも増して現実味があった。
詩人の言葉に共感し、自分にとってただ一人の理解者であるようにも思えた。

描かれない希望が人を救うことがある。
それは「得る、学ぶ」というこれまで読書体験とは全く性質の異なるものであった。このように身近に文学を感じたことはなく、中原中也を知ったことは今までのどの体験とも異なっていた。
久し振りに黄ばんだ詩集を開くと、中也の言葉と共にあの時の心情が迫ってきた。


本日の1曲
Since I Told You It’s Over / Stereophonics

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