捨てられない症候群

人々はモノの捨て時期をどう見極めているのだろうか?この部屋の押し入れには2年前に引っ越してきてから一度も開けていない巨大な段ボールがいくつかある。2年間開けていないということはおそらく段ボールごと捨てても生活に支障はないということだ。しかしながらいつか使うかもしれないと思うと捨てられない。第一その段ボールの中身を開けてしまったら丸一日が片付けで潰れてしまう。

捨てられないモノの最たるは書籍である。大学時代に買い漁った文庫本や単行本、小説やエッセイは捨てることができない。元から捨てる気がないとも言える。自分にとっては重要指定文化財に相当する。追加で買った棚も次々と埋まってゆく様を眺め、数ヶ月に一度雑誌類を選考にかけ、選考に漏れたものを渋々捨てる。しかしながら『Esquire』や『STUDIO VOICE』はやっぱり捨てられない。一度10年近く前のモノを集めて紐でくくってみたが、やっぱり捨てられずそのままになっている。

下着や、靴下の類の捨てるタイミングがわからない。果たして人々は脱いですぐに捨てているのだろうか?さっきまで身につけていたモノをポイとゴミ箱に捨てるのはなんだか抵抗がある。生ゴミなんかと一緒に捨てるのは妙な感じがしないだろうか。そして洗濯をしてから捨てようと思い、洗濯機に投げ込む。干す。風呂上がりについつい身につけてしまう。そうしていつまで経っても捨てられなくなる。糸がほつれていたり、ゴムが伸びていても身につけられないわけではない。

この間、自分の履いていた靴下のかかと部分に穴が開いていた。明らかにそれは履きすぎによって擦り切れていた。五本指ソックスを気に入りすぎるきらいがある。穴に気付いた時はひとりで赤面するほど恥ずかしかった。指ならまだしもかかとが擦り切れたのは初めてだった。すぐに履き替えたい衝動に駆られたが案の定仕事中だった。帰宅してからすぐに脱いでゴミ箱に捨てた。今回こそは輪廻を逃れなければいけない。

この上無くコンフォータブルなパンツに出会い、トイレに入った際にタグを見るとユニクロのロゴが入っていた。(へぇ、ユニクロも結構やるじゃん)と用を足したのだがよくよく考えてみるとユニクロで下着は購入した覚えがない。きっと誰かのパンツを履いてしまっている。ひとり暮らしの我が家に泊まっていった誰かのパンツである。ちょっとした戸惑いを感じながらもそのパンツもまたいつしかその輪廻に飲み込まれていった。数回洗濯を繰り返せばもはや自分の持ち物である。

ある作家はレコードの収集家で、自宅のオーディオルームには何万というレコード盤が眠っているそうだ。そこで彼は時々自分の年齢を考えて(死ぬまでに聴くことはないだろうな)というレコードに見切りをつけて大胆に処分するらしい。それまたすごい心境でまだまだ真似できそうにない。
だからモノが増が増え続ける。日々こんなにゴミを廃棄しているのに膨れあがるばかりの我が家である。


本日の1曲
JUMP / 真心ブラザーズ


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