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忘れられないCM

幼い頃は大人達が選んだ退屈で小難しい番組を眺めながら、合間に流れるCMを心待ちにしていた。そのせいか高校生になって進路選択を迫られた時、真っ先に浮かんだなりたい職業はCMディレクターだった。そこから逆算して志望を美術大学に変更した。

今思えば当時は90年代後半はCMバブルとも言える時代であった。広告業界に興味を持ってから、それなりに熱心に広告を観察するようになった。映画並みの制作費と、映像の完成度。話題の作品には大手代理店や大物ディレクターの名前が並び、CMと共に量産されるキャラクターもブームを作った。

話題になるCMは一定のクオリティーを保ち、(個人の好みの問題を除けば)非の打ち所がない。しかしやがてその”非の打ち所のなさ”を退屈に感じるようになった。洒落がきいていて、パンチがあって、商品のキャラクターや人気のタレントが出演する。それらのCMは画一的な印象で、商品情報を確認しただけで心には残らない。そして美術大学に入学した頃には興味は他のところに向いていた。

ここ1年程、まともに民放番組を見ていない。そしてすぐにCMとお笑いの話題に取り残されるようになった。どうやら話題のCMと芸人の人気は日々移り変わるらしい。

しかし2002年の朝日新聞のCMは今でも強く心に残っている。(詳細は→”テレビコマーシャル劇場”HP)
あるサラリーマンは、ある日の新聞で唐突に旧友の名前を目にする。それは旧友がサッカー日本代表入りを果たしたというニュース記事だった。高校時代に共にサッカーに打ち込んだチームメイトだ。あれから随分月日が経っていたが、自分の知らないところで夢を追い続け、それを叶えた人がいた。彼は誇らしげに旧友とのエピソードを同僚に話すが、驚きと共に賞賛の感情が溢れる。

サラリーマン役の俳優・西島秀俊氏の演技もさりげなく、CMという短い時間の中でも充分に時間軸を感じさせる素晴らしい作品だった。2002年は日韓共催のワールドカップが行われた年で、新聞がストーリーのきっかけになっている所もこちらをうならせる。
昨年似たような経験をしたからだろうか、今でもこのCMが頭から離れない。


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