ノン・クレーマー

まだ大学生だった頃、宿泊したホテルから荷物を送ったら、両親の荷物が東京の自分のアパートに届き、自分の荷物は遥か静岡の実家に配達されてしまったことがある。本来であれば怒って然るべき事態である。

母親はホテルに電話を架け、我が家にも連絡が来た。
ホ氏:『この度は多大なご迷惑をお掛け致しまして、大変・・大変申し訳ございません。』
自分:『・・・あー、いやいいんですヨ。』
ホ氏:『taso様のお宅へお詫びに御伺いさせていただきます!』
自分:『うちにですか!?』

当時住んでいたのは東京郊外である。都心からわざわざ謝罪のためにやって来るという。幾度も断り続けようやくホテルマン氏の気は済んだようだ。
『人間、間違いはありますから・・・ネ。』と自分のような若造になだめられるホテルマン氏であったが、それはさすがサービス業!とこちらを感心させたエピソードであった。(後日そのホテルのサービスチケットが届いたが、あれはどこにいってしまったのだろう?)

先週インターネットでベッドシーツを注文した。紫と赤とクリーム色が鮮やかな3色のファブリックを一目で気に入った。自分にとっては理想的な配色のシーツの配達は待ち遠しい。
1週間後、到着した商品を開封すると、マルチボーダーのシーツが現れた。今は望まれていない緑やカラシ色も鮮やかに。最早それは「イメージと違う」というレベルではなく明らかに商品が違う。
思うに前シーズンの写真をそのまま掲載していたためのミスだ。楽しみにしていただけに落胆も大きい。返品するのも面倒だし、注文が入ってから縫製するためまた待たされるであろう。

釈然としない気分だったがシーツを洗濯機に放り込み、店舗にメールをする。ネットショッピングで商品画像の掲載違いは致命的なミスだ。
『先程、注文した商品が届きましたが、掲載の画像と異なっています。〜(中略)今後このようなことがないようにお願いします。』

商品に同封されていた挨拶状には店長の写真入りだ。写真を見てしまったせいもあってきついクレームを言えなくなる。分量は少ないが好きな紫色も入っていないわけではない。数時間後に謝罪のメールが届き、買い物の失敗は頭の隅に追いやることにした。

翌日、その店舗から携帯に留守電のメッセージが入っていた。『誤ってセミダブルサイズの商品が発送された可能性があります。』
思わず『おいおい・・・』と声が出る。柄の次はサイズ違いか。

まだ新しいシーツに取り替えていなかった。帰宅後確認するとやはりセミダブルサイズであった。今度こそは頭から湯気が出そうになる。しかし電話したところで平謝りされるだけだ。メールで報告をする。
早急に商品を発送し直すというメールが来て、本日帰宅したら宅急便の不在表が投函されていた。ここ何日間シーツが取っ払われたベッドに寝ている。もうサイズがあえば柄は妥協だ。

明らかに相手のミスだと思われる事象に対してもクレームを言うことが苦手だ。もっとも、ミスは時間が経てば帳消しになるが、その後のフォローで如何でその企業に対するイメージは変わる。利用する前よりもイメージが良くなることさえある。
だからそのホテルの宿泊を避けることはないが、地方の布団店には気をつけなければならない。


本日の1曲
All I Wanna Do / Sheryl Crow


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