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ぼうしカウンセラー

ある帽子専門店に入店するとニコニコしている帽子の青年が出迎えてくれた。その店は行く度に同じお姉さんが一人で店番をしている。狭い店内には天井近くまであらゆる帽子がディスプレイされ、店内はすっかり秋めいていた。

『あー、これもいいっスねぇ!』
彼は賑やかに帽子を試着していた客だった。感じの良い店員氏は客の相談に快く応じていた。彼は勧められた候補を前に決めかねているようだ。鏡を眺め、帽子の尖端をつまんだり頭を撫でたりしている。
実は入店した直後に買う帽子は決まった。しかし照れ笑いをしながら楽しそうにしている彼を邪魔してしまう気がして狭い店内をうろうろしていた。

暫くすると彼の連れ合いらしい女の子が店に入って来た。彼女は全身から(まだ決まんないのォ!?)という雰囲気を醸し出していた。
彼は『買う直前に迷っちゃってサー』と言い訳をし、『二つは買えないしナァ!』と自分自身を戒め、『これ売れちゃいますかねぇ!?』と店員氏が返答に困る質問をした。

店内でひとり悶絶する青年。その扱いに慣れた彼女はさっさと会計を済ませた。その間彼は店の商品に紛れてしまった自分がかぶってきた帽子を捜索していた。メンバーズカードの発行の有無を聞かれた彼は『是非つくってください!』と元気がいい。彼はこの店が気に入ったみたいだった。

カップルが店を後にするとすぐ、今度は30歳くらいの寡黙そうな男性が店員氏に話し掛けた。彼もアドバイスを欲しているようで、ハンチング帽が並んだ棚の前でレジを振り返っている。

帽子を購入する時、人は誰かに相談したくなるのだろう。
一通りのやり取りが終わったのを見計らい、会計をしてもらう。当初ひとつ買う予定が二つになった。


本日の1曲
新利の風 / HUSKING BEE

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