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ワンサイドな恋

いつからか3人はよくつるむようになった。高校のクラスメイト達が、覚えたばかりの酒で夜遊びを楽しんでいる間、夜な夜な集まっては会合を開いていた。3人には共通点があった。シャイで、全員が”到底叶いそうにない”片思いをしていたことだ。

それは単なる悲観的な憶測ではない。同じ高校の、それも隣接した教室内での恋愛だった。それぞれのお相手の恋愛状況を知っている場合もある。実は恋人がいて明らかに無理なケースも、あったりする。
彼ら2人も他の生徒と同じように快活に振舞えたなら、すぐに彼女は見つかっただろう。彼女が欲しいだけならばそんなに苦労しない。しかし彼らは驚くほどピュアで一途な少年だった。

もっとも、我々が顔をつき合わせて話をしたところで、話が進展した試しがなかった。
気持ちは伝えてみたい、でも友達関係を崩したくない、ぎこちなくなるくらいならこのままの方がいいんじゃないか。思春期には誰もがぶち当たる(と思われる)大問題に頭を抱えた。毎日顔を合わせるクラスメイトに恋をしてしまった我々の悩みはつきなかった。

寄り道の行き先が決まらず放課後の教室で雑談、駐輪場でたむろ。体育館脇に設置されていた自動販売機は、体当たりをすると缶ジュースがゴロンと出てきた。ドカーン、ドカーン!と我々は順番に体当たりをし、大塚製薬の販売機は時々ポカリスウェットを排出した。
彼らはパチンコに勝つと、我が家に自転車で駆けつけ食事を奢ってくれたりした。それは田舎の高校生には贅沢な夜だった。

実は片方の彼が焦がれている女友達には彼氏がいた。彼は長らく彼女を思い続けていたが、その秘めた交際には気がついていないようだった。彼女が進学のために町を離れる日が近付き、いよいよ思いを告げるラストチャンスが訪れた。彼女が駅を出発するのは早朝。前日に彼はやっと告白を決意し、我々は景気づけの会合を開いた。

しかし騒ぎ疲れた3人はいつしかぐっすり眠り、目を覚まして反射的に時計を見ると彼女が出発する時間はとっくに過ぎていた。他の二人はぐっすり眠っている。もちろん告白を決意した彼も。

彼が告白したところで、その恋は実らなかっただろう。しかし寝坊は想定外の事態だ。布団をかぶって途方に暮れた。
モソモソと布団が動くたび、咄嗟に寝たふりをした。目を覚まして深くうなだれるであろう彼を慰める方法を考えなくてはならなかった。


本日の1曲
ワールズエンド・スーパーノヴァ / くるり

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