ブロードバンド孫自慢

昼食を終えた我々を喫茶店で出迎えていたのは、孫を自慢したくて堪らない男。彼は我々の上司である。機敏なUターンも虚しい程あっさりと捕まり、同席することになってしまった。
最早彼の孫自慢癖は職場で有名である。おまけにポータプルプレイヤーの動画つきだ。一通り話した後、引き際を悟るとすっきりとした表情で去っていく。その繰り返しなのだ。

私物の持込が厳しい職場環境もなんのその、常にいくつかのデジタル機器を携帯し、いつでも再生の準備は万端である。孫は公園を駆け回り、家の中でボール遊びをし、庭に水を撒く。
四国に住む息子一家からは毎日大量のデータが送られてくるらしい。勿論その全てには愛くるしい孫の姿が映っている。毎晩光ファイバーにのった新鮮な映像が東京にやってくる。

幼い頃の映像が残っているのだから現代の子供は幸せである。今残したいと思って撮りなおせるものではない。もともと機械に疎い家庭で育ったものの、まだその頃はビデオカメラも一般的ではなかった。
小学生の時、我が家にSONYのハンディカムがやってきたが、その頃にはもう撮る側の自我が目覚めていた。

デジタルカメラで撮影し、パソコン上で編集する。文字を入力し、音楽をつければオリジナルムービーが完成する。あまりにも熱中しすぎる為に『編集作業は一日一時間まで』と決めているらしい。
そして仕事の合間に孫の映像を部下に見せて回るのだ。デジカメで撮れる映像の長さは限られていて、録画機能は必要ないと思っていたが、こんなところに需要があったとは。

大型連休の度に会いに行くとしても子供の成長は早い。彼は毎日動く孫の映像を受信し続けている。無理矢理渡された再生機器を握り、BGMを聴くためのイヤホンまでさせられた同僚氏は滅茶苦茶な早送りで映像をすっ飛ばしていた。
方や上司氏は真剣に胸を痛めていた。息子宅の周辺に光ファイバー計画が無いことに。


本日の1曲
Hey Joe / Tahiti 80


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