何時間寝ても翌日が同じ法則

或る高校生は偉大なる法則を発見した。数時間しか眠らない日が続いても、日中に疲れたり眠気に襲われたりすることがなかった。例えば10時間の睡眠の後も、2時間の睡眠の後も、全く同じ状態で翌日を過ごせていたのだった。
高校生はそれを『何時間寝ても翌日が同じ法則』と名付け、ある期間その法則に酔いしれた。

それは大発見だった。当然眠らなければ一日が長い。その上翌日に何の影響も及ぼさない不眠の法則だ。すると寝る時間が一気に無駄に思えてきた。
世の中の人々は皆寝過ぎてはいないか?

そしてその法則に乗っ取った日々を過ごしていた。深夜番組を眺めた後はラジカセでCDを聴き、雑誌を読み耽ったり、絵を描いて過ごした。
家族は寝静まり、誰にも咎められずに過ごす時間は楽しかった。夜行性の性格はこのあたりが起源なのかもしれない。

テスト直前になっても一夜漬けすれば何とかなるとタカをくくり、実際それでなんとか高校を卒業できた。前日の真夜中から起算して明日の日中に照準を会わせればよいのだ。何しろ眠らなくてよいのだから時間はたっぷりとあった。

人間は脳内の同じ回路を二度通過させればものを覚えると聞いたことがある。確かに脳内の回路を意識しながら学習すると成果があった。しかしそんなことにこだわっていては一夜漬けは乗り切れない。答案用紙が配られると、まず余白に覚えたばかりのキーワードを書き連ねた。その場しのぎの新しい記憶は思いの外役に立った。

大学生になると、夜行性はより助長された。しかしこの頃になると『少ない睡眠時間の後に起きることができない法則』にぶち当たった。
20代ももう終わろうかという現在の悩みは『寝なければ翌日使い物にならない法則』である。
かつて大発見した法則が若さ故の特権であったことを、そろそろ認めないわけにはいかない。


本日の1曲
Hey Now! / Oasis


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