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真夜中の黄金の葉


部屋の電気を全て消してベッドに潜り込んだものの、ハードディスクレコーダーの時刻を見ると既に1時間が経過していた。明日はいつもより早く仕事に出掛けなくてはならない。しかし部屋の電気を全て消して、寝なくてはならない不自然な状況下ではなかなか寝付けない。

しんとした部屋から飲み屋の帰り客の騒々しい話し声が聞こえてくる。それは普段通りの街の音で、店のドアが勢いよく開くと、客達は騒がしく歩道を練り歩き帰っていく。

しかし昨夜は聞き慣れない音が聞こえてきた。それは当初『パラパラパラパラ』と微かな音だったが、クレッシェンドの音楽記号のように段々と大きくなり、やがて止む。間隔をあけながらそれが繰り返された。
最初は雨の音だと思った。

下の通りを行く人々は口々に『さっむーい!』と甲高い声を上げていた。部屋の中は温かいが、今は一日で一番気温が下がる時間だった。
温かい店内から吐き出された客達は甲高い声を上げ、パタパタと足早に通り過ぎていく。
するとまたしてもクレッシェンドが始まった。勢いよく降り出した雨の音だろうか。それにしては雲の移動が早すぎる気がした。

すると今度は男性の声が聞こえた。彼は音が聞こえている間じゅう『なんて綺麗なんだろう!』と感嘆しきった言葉を連呼していた。
雪でも降り出したのかもしれない。

とうとうその音の正体を確かめたくなって、ベッドを抜け出し窓を開けた。窓を開けると一層音は大きくなった。
音のする方を見ると、空から地上に向かって何かが降りしきっていた。近くの神社の銀杏の木から、大量の葉が風に吹かれて舞っていたのだった。

赤いジャンパーを着た男性は、空から降ってくる銀杏の葉を受け止めようと、車道の真ん中に飛び出していた。両手を広げて、道路の真ん中でくるくると回転している。連れの女性も道端から空を見上げ歓声をあげていた。

強い風が吹く度、何千の葉が舞うのを見た。窓を開けると、冷たい空気が一気に入り込んで、同じ目線の神社の木からは銀杏の葉が舞い続けていた。
なんて綺麗なんだろう!
なんて綺麗なんだろう!


本日の1曲
Speed Of Sound / Coldplay

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