覇気のないコーヒーショップ

お気に入りのコーヒーショップを見つけることは、新しい土地で働き出してからの最初のミッションと言えなくもない。ランチを食べる店は”日替わり”であるけれど、食後に駆け込むコーヒーショップは大体決まってくる。
なぜ毎日カフェに行くか?全てはiPodで音楽を聴き、ブログの原稿を思案し、おいしく煙草を吸うためである。そしてそのポイントをクリアできる店は意外に少ない。

喫煙席が用意されていて、テイクアウトできるカップで提供してくれる店、といえばいくつかのコーヒーチェーンが浮かぶかもしれない。
文字をを書くことを考慮するとテーブルががたついていてはよろしくない。リラックスするためには他人と視線がぶつからないことが望ましい。それに会社から近いことも。

以前の職場に勤務していた5年の間、ほぼ毎日通い続けていたコーヒーチェーンが会社近くにある。喫煙席も用意されていて、店員はよく教育されている。働き初めて最初の一週間はその店に駆け込んでいだ。
味もサービスも問題ない。しかしこの店の難点は「とても混雑していること」だった。

昼時ともなれば、付近で働く人々でごった返す。運が悪いと飲み物を持ったまま席が空くのを待たなくてはならない。誘導係の店員氏がスタンバイするのは駅に近い店舗限定のサービスかもしれない。
この付近にはもう一件の某有名コーヒーチェーンがある。そこに自分好みのドリンクが用意されているのはわかっていても、スモーカーはその店を選ばない。全席禁煙なのだ。

その混雑に辟易して、ある日駅とは別方向に歩いていると別のコーヒーチェーンを見つけた。駅から少し離れた場所にあるために、店内は幾分空いている。ここならば満員で座れないこともなさそうに思えた。
それにあろうことか1階は全席喫煙席である。喫煙席がじわじわと縮小されている都市部ではなかなかお目にかかれない光景である。客層はサラリーマンが多く、店内の喧噪も緩やかだ。

レジにて注文をすると、覇気のない店員がレジを叩く。店構えの割には値段も高い。彼女達はしかめ面でレジを打ち、にこりともせずにドリンクを渡し、淡々と食洗機を操っている。その行動全てはカウンターの中で完結していて、フロアに店員が出てくることはほとんどない。
テーブルやイスは曲がったままで誰も直さないし、客が去った後のテーブルを拭く者もいない。この店には総じて覇気がない。

しかし少なくとも、この店に圧迫感はない。トレイを高く掲げて通路を移動しなくて済むし、窓から外の景色を見ることもできる。
ドリンクの下に敷かれた無用なチラシは少し気を滅入らせるけれど、ノートを忘れた日はこうして原稿も書ける。
当分の間は、この店に通い続けることになりそうである。


本日の1曲
Pop Is Dead / Radiohead


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