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世界一有名なティーンエイジャー 『マリー・アントワネット』

ソフィア・コッポラはこれまでにも未熟な精神の揺らぎを描き続けてきた。ティーンエイジャーや孤独なものへのこだわりは彼女のあらゆる表現活動のテーマであり続けている。
マリー・アントワネットは有名過ぎる。有名であるが故に噂話の犠牲になり、それを信じた民衆は怒った。誰も彼女がティーンエイジャーということに気付いていなかったみたいに。監督のソフィアですら例外ではなかった。

『私は、どれだけ彼女とルイ16世が若かったかに気付いていなかったのです。』
(『マリー・アントワネット』OfficialSiteより)

ソフィア・コッポラは、かつてジェネレーションXと呼ばれた、次世代を代表するクリエイターでもある。特に彼女はデザイナー、フォトグラファー、映画監督、脚本家、女優と多くの肩書きをこなすニュータイプの表現者だった。映画監督フランシス・フォード・コッポラを父に持つ環境が彼女のキャリアを押し上げたのは言うまでもないけれど、彼女のセンスあるクリエーションによって彼女のオリジナリティはすぐに認められた。

時代の主流であったクラシック音楽ではなく、ロックミュージックを用い、色彩や質感へもこだわる。青春グラフィティー、ガーリー、ロマンティック。ソフィアのクリエーションのキーワードがちりばめられ、そのさじ加減がなんともソフィア的で期待を裏切らない。

散らかった部屋や、食べ残しのぐちゃぐちゃになったケーキのカットはフォトグラファーの感覚で描かれている。ベルサイユ宮殿での壮大なロケーションを含め、作品全体が写真を撮るための壮大な計画のように完璧だった。


アートを学ぶ学生が思い描いた夢のような原案を莫大な費用と関係者の協力によって作り上げた、例えるならこういう感覚に近い。

世界がソフィアのクリエーションを求め、構想が構想にとどまらないところが彼女の強みである。こちらが手を加えたくなるインディペンデント作品的危うさ。その絶妙な加減がなんともジェネレーションX的な創造といえる。

革命直前、経済情勢が悪化し国民が混乱を極める中、王妃は自然に溢れた敷地で子供と花を摘む。史実を説明する目的であれば、ベルサイユの陥落に向けてフランス国民の姿を映し出すだろう。 史実を忠実に映像化するのは他に任せ、ソフィアは自分の感覚で物語を作り上げた。

ベルサイユに乗り込んできた民衆の怒号が不気味に轟くシーンは奇妙な現実感を感じさせ、いかに宮殿の中での生活が世間と隔離されていたかを表現するのに効果的なトリミング術だった。
彼女はマリー・アントワネットという実在した人物の感情をより身近に想像することを試みた。それは本当の意味でのクリエーションで、とても意味のある作品なのではないかと思う。

マリーアントワネットの作品というだけあって、この作品は多くの人にアピールできる。スタイリッシュなマリー・アントワネットはきっと現在のソフィアにしか撮ることができない。
王妃マリー・アントワネットはその昔、世界一有名なティーンエイジャーだった。不安定で素直な心は大人だからこそ与えられる価値がある。


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