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苦渋の決断

左耳に家の電話の子機をあて、右耳と肩の間に携帯電話を挟み、右手でプレイガイドのホームページをリロードしまくる。チケット販売当日の誰にも見られたくない必死な姿である。それでも電話も、サーバーも繋がらない。繋がった頃には当然チケットは売り切れている。今までも何度もこの方法で挑んで来たが人気公演は取れた試しがない。
こうして「行きたくても行けない状況」は人気のあるミュージシャンを好きになってしまった人々の悩みのタネである。

今日はあるバンドのツアーチケット一般発売日だった。昨夜友人と電話でお互いの闘志を確認し、チケット争奪戦に挑む誓いを立てた。
にも関わらず、あろうことか寝坊してしまった。10時開始の争奪戦に今更参加できるわけもなく素直に友人氏に謝罪のメールを打つ。返事がないので電話をしてみると友人氏は10時直前から電話を掛けまくったが繋がらず、ホームページもアクセス集中で立ち往生し、争奪戦に敗れふて寝していたのだった。「ぜんっぜん繋がらないんだヨォ!」とご立腹の様子。

人気アーティストのライブに行くのは一苦労なのである。最早、一般発売ではチケットが取れる気がしない。だからありとあらゆる先行発売に群がってみる。どうしてもライブに行きたい。だから関東で行われる公演全てに申し込む。そして全てに落選。
ここまで取れない状況に陥ると頭をかすめるのはダフ屋の存在である。

ライブ会場には決まってダフ屋がいる。大きな会場にはもちろん、ある程度のキャパシティのライブハウスには必ずいる。この人達、このバンドが日本人か外人かもわからないんだろうな、というような風体のおじさん達がだみ声で話しかけてくる。

正規外価格での販売は気持ちのいいものではない。チケットを持って会場に向かっている時は無視できても今現在手元にはチケットが無い。
どうしてもライブに行きたいファンの皆さんが完売の虚しいアナウンスを聞いて肩を落としている。時を同じくして、インターネット上には当のチケットがどっと出品される。当然ながら高値がつく。首都圏の会場ほど高額が提示される。
売り手は音楽好きの価値観にも精通しているようで小さなキャパシティのライブハウスになると更に高くなる。インターネットオークションを眺めていると残り数分のところから驚くべき争奪戦が繰り広げられ、穏やかではない金額でチケットが落札されていく。

ライブが見たいという純粋な気持ちはなかなか叶わない。対バンでもフェスでもなくワンマンライブを見たいという気持ちはファンなら誰しも持つ感情だと思う。
インターネット上でチケットを仲介する会社がある。本日取り逃した1枚3800円のチケットが2枚17000円で出品されていた。契約が成立すれば倍以上の価格を支払うことになる。画面の前で頭を抱える。しかしながら昨年から待ち望んでいたツアーの東京公演である。落胆する我々にはお買い得にすら思えてきた。友人氏と話し合い、そのサイトから申し込みを済ませた。

ダフ屋行為はアーティスト側からすれば言語道断。もちろんこちらも手を出したくはないが「チケット譲渡掲示板」を覗いたところで同じようにチケットを求める人々の悲痛な書き込みが並んでいる。大きすぎる会場でのライブを好まないバンドなら事態は深刻だ。

以前、手元にチケットが余った際にファンサイトの掲示板を利用して定価で譲りますと書き込んだことがあるが、すごい早さで続々と返信が来た。だから一番早くメールが届いた主に譲ることにした。できればダフ屋を介さず、善良なファン同士で助け合いたいものである。

人の人気や才能に便乗して金儲けをしようとは随分したたかな人々だと思う。今まで何十回もライブに足を運んだが定価以上の値段を出すのは初めてだ。遂に自分の中のモラルを破ってしまった気がしてなんだかそわそわしてしまう。


本日の1曲
Juicebox / The Strokes



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2/3 『チケット争奪戦

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