大雑把な風景

高層ビルで働いていると、外の景色にしばし見とれることがある。全く色気の無いオフィス家具と、面白味のない電話機を眺めていると、ここからの眺めが素晴らしいことも忘れてしまう。しかし、目の前の仕事に飽きて見る夜景は素晴らしい。

小学生の頃、両親に連れられて新宿を訪れた時から都市的な風景に一層憧れるようになった。
人通りの少ない広い歩道の脇をタクシーが通り抜け、道端で寝ている人間につまづきそうになる。そしてファミリーレストランは街中とは客層が違い落ち着いた雰囲気だ。

仕事を終えて駅に向かう途中で自分の働くビルを振り返り驚いた。中にいると気づかないものだけれど、夜空にライトアップされたビルディングは威厳に満ちていた。そう言えば郊外に住んでいた大学生の頃、新宿の高層ビル群を何度か眺めに来た事がある。

数あるアミューズメント施設のせいで、お台場は遊び場として定着しているようだが、真冬のお台場は東京で最も好きな場所といっても過言ではない。
駅周辺をわざとらしく照らす灯りと、無言で走るモノレール。広い道路を時々通り過ぎるいくつかの車両は、目前に広がる東京湾に見向きもせずにあっけなく走り去る。

高校生の頃に見たお台場は、開催される予定だった都市博の準備が進んでいた。
広大な敷地では数々の工事車両が作業中であったが、それはこれから訪れるであろう街の興奮とは無縁に見えた。できたばかりのゆりかもめに乗りながら見た景色は荒野のようだった。

それは無理矢理付け足された東京の大地だった。剥き出しのグランドには所々黄緑色の草が生えていて、真新しく建設されたビルディングとの対比がとても妙だった。しかしその風景は今も自分に強烈な印象を残している。


本日の1曲
Am I Wry? No / Mew


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