騒やかな夏の風景

マンションの近所に神社があるせいで夏になると毎日蝉の鳴き声が騒々しい。
夜が明け出すと同時に蝉が鳴き出し、その騒々しい蝉の鳴き声はほぼ一日中続くのだけど、不思議なことに大嫌いなはずの蝉の鳴き声は、いつもこちらをノスタルジックな気分にさせる。

小学生の頃は近所の教会によく出掛けた。正確に言えば教会の敷地に通っていた。スーパーで買った黄緑色のカゴと竹竿の網を持ってそこで蝉採りをした。今思えばこの上なく夏休みっぽい遊びだった。

教会の敷地は鬱蒼としていて、ムッとする緑の香りが立ちこめていた。一面伸び放題の草に覆われている地面をゴム草履で歩き回る。廃墟のようなその土地の中心には古びた西洋的な建築物があった。そこに人影をみた記憶はない。子供達は蝉採りに夢中であるから、当時はその奇妙さにも気がついていなかった。

幼馴染みの男の子達は次々に蝉を捕獲して、スライド式の小さなカゴに放り込んでいった。カゴはすぐに満員になりミンミンジィジィとものすごく騒々しい。そして皆が誇らしげに自宅に持ち帰っていった。

その時はまだ蝉に触れたのだろうか?蝉採りに行くぐらいだから触れたはずなのに、今では蝉の抜け殻を見ただけで飛び退いてしまう程の蝉嫌いになってしまった。

耳鳴りのように継続して響く蝉の声と、ムッとする緑の香り。容赦なく照らす太陽に脳天を直撃されながら、小学生の夏休みは過ぎていった。
そして近所の神社の蝉達は今日、一斉に鳴き始めた。


本日の1曲
TRAMPOLINE GIRL / Number Girl


続けて読みたいエントリーたち

0 Responses to “騒やかな夏の風景”


  1. No Comments

Leave a Reply