1985年からの年賀状

2001年元旦。まだ大学生だった頃の話だ。奔放な大学生活を送る一方、年末年始だけはきちんと静岡の実家に帰省していた。歓喜に沸き返る記念すべき21世紀を迎えたその日も、自室で起きているとも寝ているとも言えないような状態でぼんやりとしていた。
すると祖母が廊下をパタパタと早足で歩く足音が聞こえ、ふいに自室の扉が開いた。いつもは必ずノックをするか、声を掛けてから入室する祖母がなんだか慌てている。

『アンタ!アンタから年賀状ン来てるよ!』
それは一瞬違和感を感じさせる言葉だったが、すぐに心当たりを思い出した。
あるイベントで、自分宛てに書いたその年賀状がついに届いたのだった。

1985年、両親とつくば万博に行った。もっとも、父親とこれから自分の母親になる女性とだった。父親が再婚する数年前から、遊園地や水族館などの「家族連れ」で賑わう場所に出掛けていき、我々は家族になる準備をしていた。しかし何度外出を重ねても、子供と大人の間にはどうにも誤魔化しの利かない空気がつきまとった。そんな時『ポストカプセル』を見つけたのである。

つくば万博で郵政省は未来へハガキが送れる『ポストカプセル』を設置した。投函されたハガキは、筑波学園郵便局に保管され、2001年元旦には326万636通が全国の家庭に配達されたという。そのうちの1通が我が家に舞い込んできた。(郵政事業庁はポストカプセル郵便コンクールを実施した)

21世紀!
その言葉を目にしただけで胸が高鳴った。21世紀には何歳になっているかと、指を折って数えてから、台の上に置いた1枚のハガキに文字を書き付けた。
その後の15年間。何度もそのハガキの存在を思い出した。「21世紀」という魔法の言葉は長い間子供心を魅了し続けた。その度に21世紀には自分は何歳になっているのだろうかと考えた。言い換えれば、何歳の時に自分からの年賀状が来るかを確かめていた。(本当に届くんだろうか?)

自分の送る15年先の未来は上手く想像できなかったけれど、年齢だけは確かな数字だった。しかしその頃の想像は全て現実のものとなっていた。祖母は『アンタの夢ん叶っただね。』と笑っていた。

23才になっているはずです。
たぶん結婚はしていないとおもいまーす。
東京にすんでいるといいな。


本日の1曲
Honestly / Zwan


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