お散歩・トーキョー 〜緑浮き立つ神宮外苑編〜


あのライトが春樹的なの?
うーん、球場かな? なんだっけ、最近短編集読んでさ。回転・・・
『回転木馬のデット・ヒート』?
そうそう。その中に球場の近くに住んでる男の子の話わかる? 部屋の窓から女の子の生活覗いて、“つくづく女の子が判らない” みたいな話なんだけど。

昼頃に電話がかかってきて、我々は神宮外苑に散歩に行くことにした。彼女は青山に届けものがあるからと車でやって来た。ファックスで済ませてもいいはずの書類をわざわざ届けに行くらしい。彼女はファックスというものをあんまり信用していないみたいだった。

週末の都心の公園には「運動が生活の一部になっている人達」がいた。グランドの隅ではフットサルチームの青年たちが談笑し、トラックの中に整列した子供たちはトレーナーの指示通りに体を動かしていた。

アイススケート場から出てくる少女たち、音もなく視界を横切るロードバイク、学生が担ぐドラム型のナイロンバッグ。そんな光景を見ていると、さながらここがスポーツアイランドのように思えてくる。

緑に囲まれた神宮外苑には、大小様々なスポーツ施設が揃っている。地図で見てみると周りを主要道路に囲まれ、緑が浮き立ち、島のように見えなくもない。
ここにはスポーツを愛する人が集まり、各々が選んだ競技の練習に勤しんでいる。犬だって溌剌と体毛をなびかせているのだ。

夕刻、赤坂御用地を一周することを思い立った。先ほど降った雨で空気はひんやりとしていて、植物の青いにおいが心地良い。明治記念館を眺めながら緩い上り坂を歩いていると、何人かのランナーが軽快な足取りで我々を追い抜いていった。

坂を上りきって御用地の内部を眺めると、正面に東京タワーが見えた。東京タワーの光が雨上がりの空にぼんやり滲んでいてとてもきれいだった。

豊川稲荷を過ぎ、日の暮れた青山通りを歩く。人通りの少ないこのあたりを歩くのはとてもいい。(人々は週末に青山一丁目より奥に進まないのかもしれない) 我々はイチョウ並木を通り、1時間ばかりかけて神宮球場へ戻ってきた。

彼女が言っていたのは『野球場』というタイトルの短編だった。彼女は簡単に物語を説明すると、言い訳をするみたいに「私つい最近読み返したばかりだから」と言った。

村上春樹氏は、かつて千駄ヶ谷でジャズ喫茶を経営していて、青山界隈を描いたシーンは度々作品に登場する。神宮球場で野球を見ている時、「ふと思い立って」小説を書き始めたというエピソードはファンには有名な話だ。
そんなわけで、村上作品を愛読する我々は、週末の神宮外苑を歩きながらムラカミ的な空気を楽しみもした。


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