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クールなキッズには時間がない

浪人していた1年間は毎日デッサンを描き、絵の具にまみれていた。もう9年も前のことだ。
美大にも学科の試験がある。通っていた予備校では毎朝早くから「朝学科」と呼ばれる授業があった。大きな声では言えないが1年間の出席回数はおそらく10回にも満たない。そんな自分が通っていた武蔵野美術大学も今週あたり入試なのではないかと思う。

今でも付き合いの続く友人の多くとその予備校で出会った。着々と迫る受験を控えた同志である。その不安の状態が一層絆を深めたのではないか。
しかしそのプレッシャーは気付かないうちに自分を苦しめていた。秋頃には極度の貧血状態に陥り、よろよろと足元もおぼつかない有り様だった。

大学の特性上、周りの友人達とも同じ大学を受験することになる。
2月初頭、景気づけに受けたつもりの大学に不合格。その場にいた友人達と憂さ晴らしにバッティングセンターに繰り出したが、バッドは空を切るばかりで余計に憂さがたまった。
精神を立て直す暇もなくそれから怒濤の受験週間が始まった。画材を積んだカートをガラガラを引きながら全国各地からやってきた受験生と大群をなして試験会場に向かった。

親しい友人と、合格発表は別々に見に行こうと決めた。同じ大学を受験していても共に合格するとは限らない。大学近くへ向かうバスに乗るべく立川駅のバス停に並んでいると、向こうから当の友人が歩いてやってきた。苦笑しつつ一緒にバスに乗った。時間も、移動手段も同じとは。さすがいつもつるんでいるだけあるな、と妙に感心した。
大学構内の駐輪場に設けられた掲示板でお互いの合格を確認し、晴れて我々の進路は決定した。

立川駅の公衆電話で実家の祖母に電話をした後、国立へ向かった。
欲しかったプレイステーションを合格したら解禁しようと思っていたのだ。そしてあろうことか二人して本体と一緒に同じソフトを購入したのだった。貸し借りを考える冷静さはなかったようだ。

受験シーズンを迎えた朝の国分寺駅は毎年ガラガラとカートをひいた受験生達で溢れる。居酒屋で飲み明かし帰宅する途中にその光景に出くわして立ち止まったことがあった。
寝ていないぼやけた頭で彼らを眺めていたら、不安で仕方なかったあの頃を思い出して胸がいっぱいになった。


本日の1曲
1979 / Smashing Pumpkins

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