風に舞う風花

昨日の時点では今夜半から雪の予報だったが、現在の東京23区は空気こそ冷たいが雪は降っていない。
数日前は初春の陽気だった。もう春が来たんだ。お気に入りのコートの出番はもうないのか。ちょっと寂しいな。クリーニングに出さなければならんな。でも近所のミッキーの偽物が壁にデカデカと描かれているクリーニング屋は果たしてちゃんと仕事をしてくれるのかな、などと考えていた。
そして翌日、春物の上着を着て外出し今度は寒さに震えながら帰宅した。

支度をしていて今日はあったかいんだナーと、それが呑気な朝風呂の名残りと気づかずに外気に震えることも多い。天気予報を見ずして、自分の勘だけに頼った結果である。
外出するときに雨が降っていなければ傘は持って出ない。今は駅近くのマンションに住んでいるので多少の雨ならば気にならないし、雨に濡れることは自分にとってそれほど深刻ではない。

今年の冬の東北地方は深刻な雪害に見舞われた。さかんに報道されたその事実を知らず、地元の豪雪を嘆く東北出身の人に「でも・・雪は毎年降りますよね?」と的外れで不謹慎な反応をしてしまい、ニュースを見て自己嫌悪に陥った。
ヘッドラインぐらいはチェックしなくてはいけない。

大学4年生の時、東京にも数十センチの積雪があった。当時卒業制作の真っ只中で、提出直前の1週間はほぼ寝ていなかった。作品の完成は絶望的だったが、中途半端でもそれなりの中途半端を目指さなければならない。友人たちに協力してもらい自室に缶詰になって昼夜作業を続けた。

実は卒業制作展は既に始まっていた。その笑えない状況の中、教室の見張り当番の順番がまわってきてしまった。はっきり言って人の作品を見張っている場合ではなかったが、決められた当番を放り出すわけにはいかない。
目を血走らせ、雪に足を取られながら大学までの道のりを全力で走った。これほど雪を疎ましく思ったことはなかった。

またある年は引越当日に雪が降った。
新居はエアコン取り付け前であったし、木造アパートの大きな窓にはまだカーテンすらついていなかった。荷物もロクにほどいていない状態で、とりあえず毛布と小さな電気ストーブを出し、ネコ氏と一緒に毛布にくるまった。3月末は春ではなかったか?よりによって何故引越日に雪が降るのだ?ガチガチ震える状態で片付けをするどころではなかった。

生まれ育った静岡には雪は滅多に降らない。まだ小学校に上がる前、雪が数十センチ積もり近所の公園に黄色いレインコートを着て雪を見に行った。祖父が撮ったと思われる当日の写真も実家には残っている。それから18歳で東京に出てくるまで、静岡でそれほどの雪景色は見たことがない。

気温が下がると「風花」が舞う。カザハナと読む。それはたんぽぽの綿のようにふわふわしていて地上に漂着するとすぐに溶けてしまうが、静岡の冬の光景に欠かせない。風花はいつも、制服のブレザーの肩に舞い降りては消えていった。


本日の1曲
粉雪 / ASIAN KUNG-FU GENERATION


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