World Cupの歓喜の渦

2002年6月9日、日本 VS ロシア戦。当時は友人氏と連れ立ってサッカー観戦に出掛けた。街のスポーツバーで画面に向かって一喜一憂するサポーターの面々が日夜テレビに映し出され、その勢いに圧倒された。行ってみようか。

事前に少しお店を調べてみたものの大抵は予約で満席のようだった。行けばなんとかなるだろうという気持ちで新宿駅を降り、東口を出歌舞伎町方面を目指す。
コマ劇場近くにひしめき合う飲食店が総スポーツバー状態で我々を待ち受ける。運良く入店できた店には青いユニフォームを着たサポーターが早くも興奮状態であった。

試合が始まり、決定的瞬間を迎える度に歓声が沸き上がり、チャンスを逃すと皆の悲鳴がこだました。そう、これだ。この興奮。

そして金髪の稲本氏が1点を先取した!それはワールドカップ史上、初めて日本が得点を決めた歴史的瞬間だった。ちなみに友人氏はその時、絶妙なタイミングでトイレに行っていた。

試合は日本が勝利した。そして勝利の瞬間、店内では割れんばかりの歓声が怒号のように轟いた。皆のテンションが振り切れている。若者達は大興奮で酒で真っ赤な顔を更に紅潮させている。ブルーのサポーター達が皆、椅子の上に立ち雄叫びを上げている。す、すごいぞ。

店の外に出ると、コマ劇場前はパレード状態だ。四方八方の店から吐き出されたサポーター達が目を見開き、歓喜に顔を歪めていた。その喧騒を写真に納めようとすると次々に若者が寄ってくる。そして他人同士が肩を組み、1枚の写真に納まってしまう。当日の写真には万遍の笑みをレンズに向けた他人が沢山写っている。

駅に向かう道すがら、すれ違うサポーター達はハイタッチを求めてくる。もちろん我々もハイタッチを返す。ただでさえパワフルな街に特別な熱気が渦巻き、皆が笑顔で通り過ぎて行く。

中央線に乗り込むと車内はブルーのユニフォームの人々でごった返していた。中野・・・荻窪・・・吉祥寺。電車が駅に停車する度に、各駅のホームで繰り広げられるサポーターの喧騒を笑顔で眺めた。そしてそこで輪の中心になって騒ぐ古い友人を発見したりした。「久し振りだね」などという会話を交わす状況ではなく、歓喜の叫び声と共に彼は視界の外へ消えて行った。

「オフサイド」や「ボランチ」の意味を正確に述べることが出来ない人間にもワールドカップの余波は押し寄せる。それは興奮の渦に見事に巻き込まれた心地よい思い出である。


本日の1曲
Beautiful Day / U2


続けて読みたいエントリーたち

0 Responses to “World Cupの歓喜の渦”


  1. No Comments

Leave a Reply