真夜中の都心散歩

珍しく週末に外出し、時刻は25時を過ぎていた。電車もバスももう走っていない。そして初台から高円寺の自宅まで歩いて帰ることを思いついた。バイクを牽引しながら不動通りを歩く友人氏と別れ、真夜中の住宅街に突入した。

このあたりは渋谷区と中野区の区境である。高円寺の自宅に戻るためには中野駅方面に向かえばよいのだけど、住宅街を歩いていると方向感覚が麻痺してくる。
頭に思い描いた地図を頼りに幾つもの道を曲がり、微妙なズレを危惧しているうちに方南通りに出た。勘を頼りに右に曲がる。(今考えれば、左に曲がった方がよかったかもしれない)

この辺りを歩くのは初めてだった。新宿駅までの線路は大きく旋回している。普段は電車の移動ばかりで、この辺りは丁度エアポケットのような地域になっていた。直線で結べば新宿までは近いけれど、用事がない限りは歩くこともない。
方南通りを山手通り方面に歩くと、新宿副都心のビル群が見えた。真っ黒いビルが夜空に聳えている眺めはゾッとするような美しさがあった。そして大いにこの地域が気に入ってしまった。
 
高層ビルやランドマークの多い都心では、どこを歩いていても周りを見渡すと大体の位置が把握できる。しかし住宅が密集しビルが乱立するこのあたりでは、上空の見通しも悪い。ビルが見えても飛行機灯以外は真っ暗でそれがなんのビルかわからない。時刻は真夜中で、住人達は寝ているか、留守にしているかどちらかみたいだった。

道路工事の眩しい明かりに目を細め、板を渡した不安定な足場を歩きながら方南通りを左折し山手通りに入った。青梅街道に出ればわかりやすい。誰も居ないセルフサービスのガソリンスタンドが眩しい。派手な看板と白い壁には明るすぎる程の照明に照らされている。
歩いて自宅まで帰る計画は、不覚にもトイレに行きたくなってしまった時から雲行きが怪しくなってきた。

深夜の山手通りを走行する車両の半分近くはタクシーだ。歩きながら片手をあげてタクシーを捕まえようとするが、数台に無視される。やがて1台のタクシーが止まり後部座席にそそくさと乗り込んだ。
タクシーが発車してからすぐ、中野新橋の駅前を通過した。この青梅街道を西へ走れば高円寺にも近い。深夜料金で約1300円の道程、いつか歩いてみたいと思う。


本日の1曲
Eric.W / the band apart


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