フジロック通信’08 〜ゴンドラは白昼夢行き編〜


夏の苗場スキー場で行われるFUJI ROCK FESTIVAL。ウインタースポーツに縁のないフジロッカーには、雪に覆われる会場が想像できないという逆転現象が起こる。
苗場・かぐらと2つのスキー場を結ぶドラゴンドラは、実は真冬以外にも運行している。フジロックの開催期間中は、終点のたしろ高原にDAY DREAMING and SILENT BREEZEと呼ばれるエリアが出現し、小規模なライブやDJアクトが催されているのだ。

一度は乗ってみたいと思っていたものの、運行時間に制限もあり(復路最終16:00発)、ただでさえ観たいアクトが重なっているため時間を見つけられず、過去2回の参戦時にも搭乗を見送ってきたのだった。

同じくドラゴンドラ未経験のC氏と、今年は3日目の昼にドラゴンドラに乗ろうと計画を立てた。我々は朝のうちにテントを片付け、車に荷物を積み込んだあと再び会場に戻り、乗り場に直行した。
RED MARQUEEの脇で1000円の乗車券を購入し、急斜面を登り乗り場に到着。C氏と自分のほか、青年ひとりとフランス人カップルの計5人でゴンドラに同乗することになった。


激しい加速でゴンドラが滑り出し、みるみるうちに空中に放り出される我々。まるで遊園地のアトラクションに乗っている感覚だ。しばらくするとグリーンステージで演奏中のJASON MRAZの歌声が聴こえてきた。ドラゴンドラ搭乗のため諦めたライブであるが、こっちはこっちで結構スリリングな展開である。

ゴォォォゴトゴトッ!と高速でアップダウンを繰り返し、とんでもない高さをびゅんびゅんひた走るドラゴンドラ。深い谷に向かって急降下する時は、同乗したフランス人カップルと顔を見合わせる。言葉の壁を越えそうになる。

復路のゴンドラに乗っている人々は、すれ違いざまに手を降ってくれる。恐怖に顔をひきつらせながらこちらも手を降り返す。ひとりで乗ってきた青年氏もニコニコと手を降っていた。帰り道に他人に手を振りたくなる場所とは、どんなところなんだろう? 期待が高まった。

恐る恐る覗き見た下方には渓流が流れていた。人間が介入していない自然の威力みたいなものを静かに感じる絶景である。植物には植物たちのやり方があるのだ。そんな自然の繁茂をしばし凝視した。

体感傾斜45度以上はある最後の急斜面をガガガッ!と登りきると、たしろ高原に到着した。出発から約20分、標高1345メートルの頂上である。


高原に初めて降り立った我々は、思わず感嘆の声を上げる。見渡す限り黄緑色の芝が広がり、雲がかった空が近い。途切れることなく続くパーティーミュージックに合わせ、真っ昼間のレイバーは恍惚とした表情で体を揺らしていた。まさにデイドリーミングだ!

しばらくして、JAKOB DYLAN OF THE WALLFLOWERSを観に下山するC氏と別れ、芝に仰向けに寝転がる。地上と違って、芝がフレッシュで軟らかい気がした。何にも遮られない視界のなんと素晴らしいことか。一年に一度あるかないかの休息を得た気がした。

辺りに『ニージュシ!ニージュゴ!』と回数をカウントする声を響かせ、高原の一角で30人ほどが縄跳びをしていた。誰かが縄に引っ掛かっても、セーフセーフ! 大丈夫!!と笑顔で声を掛け合っている。地上のステージではお目にかかれないスポーティーでサワヤカな風景をライオン氏もリラックスポーズで見守っている。


高原の唯一の施設であるレストランに入り、食堂の列に並んでいると、突然雨が降りだした。雨は急激に勢いを増し、目の前の若者が「バケツを引っくり返したみたいだな!」と叫んだ。屋外にいた大勢の人々が悲鳴をあげながらレストランに駆け寄ってくる。ステージの出演者たちも続々と撤収してきた。

窓際の席に座って、モグモグとカレーライスを食べながら、雷鳴が轟くどしゃ降りの外を眺める。(ふもとの会場は大変なことになってるだろうなぁ。)と思う。
ゆっくり休憩した後、音楽が止み人も少なくなった外に出た。雷雨に見舞われはしたけれど、約3時間の高原滞在を満喫して帰りのゴンドラに乗り込んだ。


本日の1曲
Live High / Jason Mraz


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