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フツーを目指す男

フツー・に【 フツーに 】
1. 《「フツー」は「普通」の意。多くあとに肯定的な形容詞をともない、肯定を強めている状態。若者言葉の一種。》
言うまでもなく。常識的に。「あの人はーにかっこいい」

ちょっと軟派な会話と、はにかんだ笑顔。細い身体を包むシンプルなストリートファッション。
そんな彼の ”なり” を回りは結構注目している。ちょうど音のするほうに猫が耳をそばだてるみたいに、その存在を認識している。

昼下がりの定食屋にて、我々は同僚の青年氏を『社内で抱かれてもいい男は?』とくだらぬ質問で問い詰めていた。
『〜さんは?』『じゃ、〜君は?』というこちらの提案にも首を降り続け、ひとしきり『違うナァ・・・アレはだめだ。』などと失礼なことを言っている。青年氏、本気で選びにかかっているようだ。山かけトロロ丼をこねくり回している。

そのうち各自が黙々と食事を再開した。箸と器のカチャカチャとした音だけが響く。

『・・・やっぱ・・・あの人なんじゃないの?』
しばらくすると青年氏はこちらの顔色を窺うように言った。
我々はこう吐き捨て、青年氏の解答に失望した。
『あの人はフツーにかっこいいジャン・・・!』

その相手とはいわずもがな、冒頭に登場した彼である。青年氏は忠実な犬みたいな上目遣いでこちらを見ている。お決まりの回答を提出してしまった後ろめたさすら感じさせながら。

この場において彼の名前が出ることは何の驚きも与えない。『えー!』とか『なんで!?』というワクワクした会話すら続かない。彼は「わざわざ言うまでもなくかっこいい」からだ。我々はサッサと別の解答を促し、青年氏の模範解答はすぐに追いやられてしまった。

そんな「フツー」についてちょっと考える。はからずもフツーの解答をしてしまった青年氏だって『あの青年氏、フツーにかっこいいよネ。』と言われている可能性だって、無くはない。それを言うと『聞いたことない?ないの?』とせっつかれたが、青年氏に対するそのような賛辞はまだ耳にしたことがなかった。フツーというのは結構難しいのである。

確かに、複数人が瞬時に同意するかっこいい男はなかなかいない。
かっこいいと言われるのはやっぱり嬉しい。あらかじめ選択肢から除外されようが、その場の会話が発展しなかろうが構わない。フツーにかっこいいというのは、結構貴重なものなのだ。


本日の1曲
A Certain Romance / Arctic Monkeys

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