オーディエンスかく語りき

国内のロックフェスティバルは年々増加し、規模も拡大しつつある。にも関わらず、人気フェスになると開催日までにチケットはソールドアウトし、主催者側も全ての希望者にチケットを販売出来ずにヤキモキしている。かつてロックに親しんだ若者が親になり、子連れでフェスに参加している光景は珍しくない。フェスバブルの時代到来である。

しかし果たして全員が望まれた客と言えるのだろうか?
悲しいかな、様々なライブ会場でその疑問を感じることがある。

それはあるフェスティバルでの出来事だ。広大な会場には複数のステージが設けられ、いくつかのライブが同時に行われる。各日のトリを務めるのはやはり人気バンドということになる。その日のステージには何万人もの観客が詰めかけた。

ライブ中のMCでフロントマンは複雑な思いを打ち明けた。同時間帯の違うステージで、あるバンドの解散ライブが行われていた。当然ながら彼はそのラストステージを見届けることはできない。彼はそのバンドの大ファンで、かつてオーディエンスとしてその音楽に熱狂した。
時を経て、今や彼自身がフェスティバルのヘッドライナーを務めるアーティストとなった。ロックスターを夢見た青年は、その後何万の観衆に歓迎される存在になったのだ。
彼の淡々とした口調を皆が聞き入る。

大勢のオーディエンスがその思いに胸を熱くしている間、周りの女子はひっきりなしに喋り続けていた。至近距離であるから嫌でも会話の内容が聞こえてくる。彼女達グループはどうやって最前列を確保するかを相談していた。彼女達に彼の思いは伝わっていただろうか?

ライブ中に起きる無意味な野次が場を白けさせることもある。演奏中にも関わらず大声で喋り続け、曲の合間にメンバーの名前を呼ぶのに必死な女の子。開演前は場所取りに必死になるあまり、周りの迷惑を顧みない。バンドが登場すると彼女達は一斉に歓声を上げた。

あるバンドのメンバーは自身のBlogで不満を漏らしていた。加熱する状況で場違いな野次が増える。しかし本来の「音楽」に注目してくれるファンだけを選んで会場に入れるわけにもいかない。黄色い歓声を浴びるのは必ずしも彼等の歓迎するところではない。

フェスが根付き、その「マナー」が取り沙汰されるようになった。音楽を愛する人々が集まる場であるなら、そんな堅苦しい言葉を使わなくともいいはずなのに。


本日の1曲
Dakota / Stereophonics


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