ロックできない対訳

洋楽のCDを購入する時は、価格の安い輸入盤を差し置いて専ら国内盤を購入している。レーベルの努力と策略が交錯する国内盤限定のボーナストラックの存在も大きいが、封入されたライナーノーツには差額を支払う価値がある、と勝手に思っている。

そこにはアルバム製作の背景や、バンド結成秘話の他にインタビュー記事が収録されている時もあるから見逃せない。海外の素性の知れない新人バンドについては取り上げるメディアも限られていて、あまり知る機会もない。

残念なことに英語を理解できるわけではないから、歌詞カードも必要だ。輸入盤は歌詞カード自体ついていないものもある。思い入れのあるアーティストの場合、歌詞カードだけを外出先に持ち出し、読書代わりに読んだりする。文学好きの友人氏は歌詞カードを”詩集”と表現していた。成る程、そういう言い方もできる。

対訳された歌詞は本来の意味をぼんやりと伝えてくれる。スラングや海外のTV Showのスターの名前に戸惑うこともあるけれど、曲のイメージと相まって楽曲の世界観が見えてくる。
しかし、いくら英語を完全に理解していないとはいえ、明らかに不自然な対訳を目の当たりにすることもある。

アメリカのバンド、Incubusは”Make yourself”という名曲を生み出した。しかしながら「Make yourself=自分で自分をこさえてみろよ」という対訳にはやや違和感を感じる。前後の文脈を考慮すると「自分を確立する」という意味で「筋を通してみろよ」というニュアンスが感じられるのだ。

そもそも「こさえる」という言葉を、おじいちゃんからしか聞いたことが無い。一般的に用いられる言葉なのだろうか?古語ではないのか。F×CKを連呼する騒々しい曲のイメージからはかけ離れてはいないか。
このフレーズを聴く度に、生前のおじいちゃんの歯の抜けた顔を思い出して、なんだかロックな気分になれないでいる。


本日の1曲
Make Yourself / Incubus


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