大竹伸朗 ー全景ー展 @ 東京都現代美術館



初めて大竹伸朗の作品を知ったのは、書店のアートブックのコーナーだった。ページを開くと色鮮やかで節操のないコラージュの数々が飛び込んできた。作品集はそれ自体がスクラップブックのようにも見えた。それからは大竹氏と言えばコラージュのイメージが定着した。

それ以降、彼の作品を目にする機会は多々あった。しかしその作品群は抽象画であったり、イラストレーションであったり、立体作品であったりした。文筆家として著作まである。それらは同じアーティストとは思えないバリエーションを持っていて(この人何者!?)と思わせるに充分だった。
現在、東京都現代美術館では大竹伸朗の【全景】展が開催されている。まだしっかりと作品に触れたことのない、何者かわからない一人のアーティストの回顧展だった。開催の知らせを聞いてからはわくわくして待っていた。生まれて初めて前売り券というものを買ってしまった程である。

会場は広い美術館の全フロアで行われていた。受付で『展示数が多いので、閉館時間にお気をつけください』と言われ、更に胸が高鳴る。目の前のエスカレーターを上り、3階へ。順路を辿り展示は地下まで続く。

まずはスクラップブックの展示から始まった。ガラスケースの周りを歩き、今や最初の出会いともいえるコラージュ作品に興奮する。
品のいいブックを想像してはいけない。本の形はしているものの、大きさも材質も実に様々。彩色が施され、いびつな形に変形している。
大竹氏は若い頃に世界中を放浪していた。外国の地のチラシや雑誌が詰め込まれたコラージュにはそこにいた確かな証があり、情報過多のブックには無国籍な空気が漂っていた。

スクラップブックの展示はまだほんの、ほんの入り口にしか過ぎなかった。幼少時代のスケッチや美術大学時代の油絵、クロッキーの紙片などはよくぞ今まで保存していたものだと驚く。

作品を描くキャンバスも、スタイルも様々。デッサン力が発揮された美しい絵画や、厚く塗った絵の具を引っ掻いてエッチングで描いた作品。大型のコラージュにはティッシュや鉛筆すら作品の一部として貼り付けられている。
大竹氏の活動は美術だけにとどまらない。ノイズバンドのミュージシャンとしても活動し、音の出るインスタレーションもいくつか展示されていた。

近年の作品まで、ほぼ毎年作品を残しているのも感嘆に値する。まさに回顧展の名にふさわしく年代を追って作品が展開されてゆく。ここまで徹底的に”回顧”している展覧会は初めてだった。
乱雑な作品やラフな画風、未完成な作品を好むのは、今まで美術を勉強してきて生まれた実感である。大竹伸朗のフリースタイルっぷりには感服してしまった。


本日の1曲
The Black Angel’s Death Song / The Velvet Underground



大竹伸朗 ー全景ー展
東京都現代美術館
東京都江東区三好4-1-1 (木場公園内)


会  期:2006年10月14日(土)〜12月24日(日)
開館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
休 館 日:月曜休館
会  場:東京都現代美術館 企画展示室 全フロア
観 覧 料:一般1,400円、学生1,100円、中高生・65歳以上700円、小学生以下無料

東京メトロ半蔵門線 清澄白河駅B2番出口より徒歩9分
都営地下鉄大江戸線 清澄白河駅A3番出口より徒歩13分
東京メトロ東西線  木場駅3番出口より徒歩15分
都営新宿線     菊川駅A4番出口より徒歩15分


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