古着屋の若者たち

自宅の下階には古着屋がある。おそらく、その店では10人くらいの若者が交代で働いている。
時々マンションの廊下には洋服の詰まったダンボールが並んでいる。ラベルを見るとどうやら海外から輸入されているらしい。建物には古着屋特有の衣類の匂いが漂っている。

毎日、古着屋の若者たちは居住者達に気を遣いながら仕事に励んでいる。重い荷物を持ってホームセンターから帰宅する時も、両手にスーパーの袋を提げて帰ってくるときも、若者たちは居住者に道をあけ、感じの良い挨拶をする。

店長とおぼしき若者は同い年くらいだろうか。彼は作業中に通りかかると手を休め、恐縮した笑顔で挨拶をする。何人もいるバイト君達も一様に感じが良い。店舗兼住宅のこのマンションの出入りは、居住者よりもバイト君達の方が多いのではないかと思われるくらいだ。
彼らが仕事に精を出すあまり、階段を下りていくと同僚に向ける無邪気な笑顔を間違って向けられる時もある。若者たちは恥ずかしそうに笑顔をごまかしながら、軽く会釈をする。

店が開店する11時頃から23時頃まで、若者たちは店と倉庫の往復を繰り返す。複数の若者が働いているのにも関わらず、彼らは無駄話をあまりしない。騒ぐこともなく黙々と作業に没頭し、タグ付けや棚卸の地味な仕事をこなしている。

倉庫のドアが開けっ放しの時、普段見ることのない部屋の中を覗き見ると、部屋の中は段ボールだらけで所狭しと古着が積み上げられている。エアコンもない部屋は、そこから熱気が流れ出してくる程もうっとしている。いつもこんな暑い部屋で重労働をしていたのか、と驚き冷たいお茶でも差し入れたい衝動に駆られる。しかし今は無関心な居住者を装い、毎日軽く会釈をして通り過ぎている。

古着屋の時給は恐ろしく安いというのを聞いたことがある。将来古着屋をやりたいと思う若者が修行の意味で働くことも多いらしい。今はこのマンションを忙しく動き回っている若者も、いつか自分の店を持つのだろうか。


本日の1曲
The Good Life / Weezer


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