COOK and COOK!

幼い頃は毎晩のようにダイニングテーブルに集まった家族に料理を振る舞っていた。星形に切り抜いたこんにゃくに生クリームを乗せたり、ゼリーと味噌をあえてみたりした。それは子供のままごとをリアルな食材で実践するという暴挙だった。冷蔵庫から食材を選び、いろんな引き出しを開けながら日々前衛的なシロモノを創造していた。家族はテレビを見ながら我が子が運んでくる奇想天外な料理の数々を喝采してくれた。

18歳で上京するまで、家事を手伝ったことがなかった。ひとり暮らしを始めるにあたって特に危惧していたのは自炊だった。実家から持参した食器に、サラダを根気よく盛り続けた。「ひとり暮らしは野菜不足になりがち」というスリコミがあったのだと思う。毎日のように忠実にレタスをむしり、きゅうりをスライスした。そのうち友達が出来始め、体の半分くらいはファミレスの食事で生成されるようになった。

今のように頻繁に自炊をするようになったのは高円寺に越してきてからだ。これまで住んでいた家は近所にスーパーが無かったが、高円寺駅には24時間営業の東急ストアが隣接している。だから真夜中に思い立って買い物に出かけ、おもむろに料理を始めることもできる。2年前に24時間営業に切り替わった当時は真夜中のスーパーの需要にさして関心が無かったが、いつでも食材が揃うというのは思いの外便利であった。

ひとり分の自炊では食材が余る。そうして必然的に同じものを食べ続けることになるが、本来凝り性であるため飽きるまで同じものを食べ続ける傾向がある。過去にはぶり大根、ゴーヤーチャンプルー、ひじき煮、スパゲッティーボロネーゼなどにハマり、毎食数週間は食べ続けた。同居人がいれば気を遣うのだろうが、そうして同じメニューを食べ続けていても誰も文句を言わない。ちなみに自炊を始めてみて一番好きな野菜がネギだということに気がついた。

パスタの類は食べる分だけ作ることが出来るひとり暮らし向けのメニューである。もっとも簡単にできる納豆パスタを勝手に紹介させていただく。
『茹でた麺の上によくかき混ぜたひきわり納豆をかけ、温泉卵を乗せる。めんつゆを軽くかけて味を付け、最後に刻みネギをぶちまけて出来上がり』
最早料理と呼べるのかも怪しいスピーディーさであるが納豆好きには受け入れてもらえるメニューだと思う。フライパンで麺と納豆を炒める方法は部屋中にニオイが充満してしまうけれど(結構あとあとまで臭う)、この作り方ならその心配もない。納豆はやはり「ひきわり」が麺に絡んでおいしい。

当初は危惧していた自炊だが今ではそれなりにレパートリーが増え、毎晩何を作ろうかと考えるようになった。しかしながら友人達に料理を振る舞う段になると分量を間違えてへんてこな味になるのは、常にひとり分しか作らない独り者の悲しい性である。


本日の1曲
Heaven’s Kitchen / Bonnie Pink


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