基地の街のアメリカのにおい

福生市は東京西部に位置する米軍基地の有名な街だ。国道16号沿いに横田基地があり、中心を滑走路が貫いている。
外からも白い集合住宅が団地のように連なっているのが見える。基地内には学校やスーパーマーケットもあるらしい。

小平市に住んでいた大学生の頃、暇を持て余して何度かバイクで福生を訪れた。肩に一眼レフを下げて大体30分の道程は電車で行くより随分と早い。
道端にバイクを停めて国道沿いを歩く。16号を隔てて、右側はアメリカ軍敷地、左側にはこじんまりとした店舗が並んでいる。

雑貨店や飲食店はどれも建物は古く、個性的なつくりをしている。家具屋には米軍放出品のアンティークファニチャーが並び、既に売約済の札が貼られているものもある。
アメリカンレストランに入れば、豪快なTボーンステーキが鉄板を賑わす。FireKingが似合う種類の店だ。

基地の街のアメリカのにおい。雑貨屋に出入りする若者や、国道を走る国産車が日本を感じさせるけれど、人のいない時間にここを歩いたなら印象は随分違うかもしれない。
新宿や渋谷に慣れてしまった自分は低く広がった空を見ることも珍しい。独特の空気に漬かりながら、時間を過ごす。ネオンの種類も、光の具合も街のそれとは異なっている。

夕暮れの基地の風景は素晴らしい。滑走路に発着する戦闘機。頭上に響く轟音。夕暮れの青と赤の大気のラインが鮮やかだ。空が闇に包まれる少し前の時間にこの街は色気を湛える。

高円寺に越してきてから初めて福生に行ったのは確か昨年末だった。高円寺から中央線で立川へ。青梅線に乗り換えて約1時間半かかる。
夕暮れ前の基地周辺を歩くが戦闘機が飛ぶ気配がない。警備員氏によるとその日は”飛ばない日”らしかった。しばらく基地周辺を歩きながら写真を撮り、東福生から電車に乗った。

東京に居ながら感じる心地の良い違和感は、福生ならではのものだろう。ここで完結する生活も悪くなさそうだナ、といつもそう思う。


本日の1曲
Ize Of The World / The Strokes


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