コーエンズィー

新宿駅10番ホーム。一日の仕事が終わり、疲れた身体を中央線が運んでくれる。その日しかしホームに到着したのは見慣れない車両だった。間違えて総武線のホームに来てしまったのか?そういえば中央線の車両が新型に移行するというニュースを聞いたことがある。

車内は広々と感じた。とりあえず物珍しい黒い三角形のつり革につかまる。
角張った印象が強かったこれまでの車両に比べると、物腰が柔らかい感じがする。
目の前の窓は一面当たりの面積が随分広くなって見晴らしが良い。

車内は混雑を想定したつくりになっているようだ。8人掛け座席の中腹にもバーがあり、ラッシュ時の乗客をサポートできる。ドアの上部には液晶パネルが2面装備され、運行情報と音のないCMが流れていた。その雰囲気は山手線によく似ている(そのうち山手線のように”中央線大人講座”が放送されるのだろうか)

この間、快速と間違えて中央特快に乗ってしまった。
ホームに降りる前に確認した電光掲示板も、数分おきに電車が発着する中央線ではホームに降りた時点でズレが生じることがある。快速に乗ったつもりが中央特快だった、という経験は初めてではない。
快速も中央特快も、次の停車駅は中野。その時点で間違いに気付かなければ否応なしに三鷹まで運ばれてしまう。

旧型車両の車内ではアナウンスの他に運行種別を確認する手段がない。耳にイヤホンを突っ込んでいれば当然聞こえない。リアルタイムの運行情報が表示される新型車両になれば乗り間違いは減るだろう。
見ると隣にいるサラリーマン氏も食い入るように液晶モニタを見つめている。きっと彼もこの車両に初めて乗ったのに違いない。

重厚感のあったこれまでの車両と比べると、新型車両は軽やかに走行する。騒音も随分軽減されているみたいだ。洗練された印象は中央線にあまり似合わず、モノレールにでも乗っているような違和感があった。

上京してからの10年間乗り続けている中央線は徐々に新型車両に替わりつつある。無骨な四角い中央線は真オレンジのチョークが走っているようだった。帰省から戻り、東京駅の1、2番ホームで出迎える中央線を見る度に安心感に包まれる。

特筆すべきはダミ声の車掌のアナウンスは女性の声に取って代わったことだ。日本語と英語によるアナウンスは新幹線さながらだ。これまで何度か中央線の女性アナウンスに遭遇したことがある。それは確実に女性の乗務員が搭乗していることの証明でもあった。
しかしこれからは毎日録音されたテープを聞くことになる。『次は〜中野だ』と聞こえて吹き出すこともなくなるけれど、『Next Station is・・・コーエンズィー』という英語の発音にも慣れなくてはいけない。


本日の1曲
黒目がちな少女 / Number Girl


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