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Weezer “WEEZER FESTIVAL” @東京 国立代々木競技場第一体育館


ホールでドリンクの長い列に並んでいると、スタッフがライブの開始を告げて回っていた。場内に顔を出すと、照明が客席を照らしている。あれ?ライブは始まったんじゃないの?

皆の視線が集中している後方を見ると、voリバースがマイクを持ち、客席の一人一人に名前を聞き『ハジメマシテ。』と丁寧に頭を下げている。この日、ファンと一緒に楽曲を演奏する企画(フーテナニー)が進行していたみたいで、この丁寧なご挨拶が30人分くらい繰り返された。

ほどなくしてセッションが始まり、早くもアンコールのような和やかで不思議な雰囲気が包む。ライブらしからぬ明るい照明と手拍子は、どこかの市民会館のリサイタルみたいだ。ロックのギグとは程遠い。

リバースは『ツヅケテ〜』と「Beverly Hills」を歌いながら言い去ったあと、ようやく反対側のステージに姿を現した。今夜のライブ、波乱の幕開けである。

ここ数年のWeezerは、日本のファンが聴きたい曲を惜しみなく演奏してくれている。この日のセットリストを振り返ると、1stアルバムと2ndアルバムからの楽曲が多いことがわかる。「Pink Triangle」や「Why Bother?」(どちらも2ndアルバム「Pinkerton」収録)、美しいコーラスワークの「Susanne」(シングル「Undone」のB面に収録)まで披露されるとはまったく驚いてしまった!

そしてなんと、半分くらいの曲で、リバース以外のメンバーが楽曲を歌うという異例の事態。いや、その慣れた様子や、オフィシャルサイトで公開されている動画からするに、最近はこのスタイルなのかもしれない。

ステージに座り込み、ボーカルを取らない、ドラムを叩き始める。ポニョの歌詞を口ずさみ、曲の真っ最中に『コノキョク、スキデース』と叫ぶ。終始奔放なパフォーマンスを続けたリバース。まったく、ファンの期待に応えているのか、裏切っているのか!?

この日数少ないちゃんとした演奏(?)「Say It Ain’t So」は、Weezerってこんなに格好良かったっけ?、と思ってしまう。(CD音源を真似て)メンバーへのインタビューから始まった「Undone (The Sweater Song)」など、最初の数音で身体が反応してしまう。

Weezerは自分にとって大切なバンドであるものの、一般的には意外にも知名度が低い。それでいてこれだけのオーディエンスが集まり、ブーイングが起こらないのもすごい。(「Perfect Situation」はリバースに歌って欲しかった気もするけれど)

今回の来日ツアーは本日が最終日となる。MCでそれを告げるとリバースはくるりと後ろを向き、バンドメンバーに「オツカレサマデシタ。」とおじぎをする。打ち上げでもない、ライブ真っ最中に行われたシメの挨拶には笑わずにいられない。(4代目bassの)スコットもバンドに馴染んでいるみたいだし、日本人のワイフのおかげでリバースのニホンゴMCも快調である。

昨年あたりはバンド解散説が飛び交ったこともあった。しかし今年リリースされたアルバムの出来は最高。今はYouTubeを使ってファンと曲を合作したり、フーテナニー企画でファンとセッションするなどの(以前のWeezerではちょっと考えられない)変化も起こっている。バンドは、周囲の心配をよそに楽しんでいるみたいだった。

自分のダメっぷりを歌うWeezerのスタイルは、かつて「泣き虫ロック」と呼ばれていた。
今夜は興奮と笑いが交互にやって来る不思議なライブ。リバースだっていつまでも泣き虫じゃいられない。日本に甘えた男(!)の最高のショウだった。


SETLIST
– Hootenanny –
01. Island in the sun
02. El Scorcho
03. Beverly Hills

04. Dreamin’
05. Dope Nose
06. Pork & Beans
07. Why Bother?
08. Hash Pipe
09. Buddy Holy
10. Creep (Radiohead cover)
11. My name is Jonas
12. Pink Triangle
13. Susanne
14. Undone (The Sweater Song)
15. Keep Fishin’
16. Perfect Situation
17. Say it ain’t so
18. Thought I Knew
19. Troublemaker

– Encore –
20. Automatic
21. Greatest Man That Ever Lived (Variations on a Shaker Hymn)


本日の1曲
Say It Ain’t So / Weezer
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買い物日誌006 パーフェクトな記念品

横浜トリエンナーレ マグカップ(グリーン)
¥840
購入場所 横浜トリエンナーレ 場内ミュージアムショップ


美術館の展示を見終わったあとに訪れるミュージアムショップは、なんともわくわくする。人気作家や美術館のグッズは良い。だけど、その展覧会のために作られたオリジナルグッズはもっと良い!

先週、横浜トリエンナーレに出掛けた。2001年に始まった横浜トリエンナーレは、世界中の作家が参加する3年に一度の現代アートの祭典。赤レンガ倉庫などの周辺の建物や敷地を巻き込んだ一大プロジェクトである。

メイン会場の新港ピアに入館し展示を回り終えると、愛しのミュージアムショップが出現した。
壁際の本棚にはアート関連書籍や写真集が並び、テーブルにはトリエンナーレの公式グッズが積み上がっている。展示スペースと簡単に仕切られただけの仮設的な店構えではあるものの、そこではたくさんの人が身を屈めて品物を物色中だった。

テーマカラーのグリーンに統一されたガイドブックやピンバッヂ、パッケージも素敵なキャンディーやエコバッグ。見るほどに心が踊る。
「今年の」トリエンナーレのグッズは、会期が過ぎれば手に入らなくなってしまう。そんな特別感にそそられ、買わずにはいられなくない。たとえ所持金が少なくともオリジナルグッズはベツバラなのである。

公式ブログで紹介されているのを見て購入を決めていたマグカップを買う。
開催テーマのコピー(タイムクレバス= “時の裂け目” )入り、カップの底には年号入り。実用的で値段も手頃。またパーフェクトな記念品を手にしてしまった!


本日の1曲
Circle / 木村カエラ
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デイ・バイ・デイ はじめます

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本日、デイ・バイ・デイをオープンします。
http://day.living-tokyo.com/

ブログを開いても更新されてないと、がっかりしちゃう。こんな、ありがたくも悩ましいご意見をきっかけに、写真日記ブログの開設を思い付きました。

デイ・バイ・デイは「WordPress」というブログソフトウェアを採用しています。サーバー契約、デザインカスタマイズ、ドメインの設定を乗り越えて、ようやく完成です。

さらに、リヴィング・トーキョーに来ていただいた方に更新状況をお知らせできるよう、トップページに最新エントリーの写真を表示したいと思いました。はじめから考えていたことでしたが、ビジョンはあっても構築のスキルが追い付かない状態です。
そんな自分にアドバイスをくれたのは盟友・イーゴン氏でした。
 

イーゴン【 いーごん 】((米)) egon,((英)) egon
1.《人名》杉並区在住のWebディレクター。面白そう
なことにはとりあえず手を出してみる男。新しいWe
bサービスに目がないが、飽きるのも人一倍早い。通
称は自らが結成していたバンド名に由来。黄色好き。
▼参考サイト:イーゴン自治区 http://egon001.blog94.fc2.com/

サイドバーに設置したブログパーツは、エントリー投稿時に生成されるRSS情報を利用して、自動的に画像が更新されるようになっています。

リヴィング・トーキョーに毎日更新が帰ってきた!?
こちらにお越しいただいた際には、ぜひデイ・バイ・デイも覗いていってください。

本日の1曲
Air Painter / CSS


彼女は死んだのか、本当に?


アートディレクターの野田凪(のだ・なぎ)氏が亡くなった。享年35歳。独自のコワかわいい世界観で、突出した才能を見せつけていた彼女。海外のエージェントに所属し、メディアでは海外の名だたるクリエイターと並んで紹介される人だった。

そのニュースを知ったのは9月12日の朝。情報を調べようとするも、訃報はなかなか見つからない。彼女が設立した宇宙カントリーのサイトにも情報はない。ブログは6月の更新で止まっている。

検索して行き当たるのは個人のブログばかり。一般に馴染みの薄い「アートディレクター」という職業についていたものの、アーティストのミュージックビデオや有名な広告を手掛けてきた人だ。世間ではほとんど無名の映画監督が大麻所持で捕まったときでさえ、報道はあったというのに。

今回奇妙だったのは情報が見つからなかったことだけではない。死亡の話題を伝えるブログで、この訃報が何かのパフォーマンスでないかと勘ぐる人がいたことだ。

彼女は以前、自分の作り出したキャラクター・ハンパンダの葬儀のパフォーマンスを行った(Mopix記事)。彼女は喪服姿でそこに佇み、ハンカチで涙をぬぐった。だから今回のニュースを聞いた人達のうちの一部が彼女自身の訃報を信じられなかったのだ。

「(葬儀の)パフォーマンスのニュースを間違えて伝えているのではないか」
「でも、彼女が人の命をネタにするとは思えない」

情報は横並びで皆が憶測を述べているに過ぎない。これだけインターネットが普及していながら、確かな情報が判らない状況というのは不可思議な事態だった。


彼女は、広告の手法ではなくアートに近いそれで世界観を作り上げた。一連の作品からクラフト感を感じ、その度に、もの作りが好きな人なんだなぁ、という印象があった。

2005年のラフォーレの広告は、グレートーンでモノクロの世界を作りカラーフィルムでそれを撮影したビジュアルを使用した。それは、アートとして扱われても差し支えない作品で、アートは広告になり得るのだと気付かされた。

海外のWebサイトで彼女の訃報が掲載され出してから、混乱はおさまりつつある。今回の数日間の「混乱」は、皮肉と言えば皮肉な事態だった。しかし、それだけ多くの人が彼女の個性を受け取っていたことも確かなのだ。
誤解を恐れずに言えば、自らの死の誤報を流すことも、“彼女ならやってもおかしくはない” 。アートを広告の舞台でやってのける、本当に創造的な人だったと思う。

心から哀悼の意を捧げます。天国でも楽しいパーティーがありますように。

・所属エージェント/Partizanのページ
Nagi Noda Passes Away | Creativity Online の記事


本日の1曲
Forever And Ever / Mew


買い物日誌005 二酸化炭素とロックンロール


RADIOHEAD JAPAN TOUR 2008 チケット
スタンド指定 S席

¥9,500
購入場所 イープラス


最新アルバム『In Rainbows』は、CDの発売以前にダウンロード販売が行われ、購入者が自由に値段を決める方式が随分話題になった。

RADIOHEADはアルバムごとに違う音を出すバンドと言えるかもしれない。オルタナ色の強い『Pablo Honey』は大好きな作品だし、ダークな『KID A』は聞けば聞くほど病み付きになる。前述の『In Rainbows』と『The Eraser』(vo.トム・ヨークのソロアルバム)は新たな傑作だった。

10月の来日公演がアナウンスされたのは3月。さいたまスーパーアリーナ公演2Daysが即日完売するとは、さすがである。

ところで、来日のニュースを聞いて、トム・ヨークのある発言を思い出した。
___ 今のツアーのあり方は、エネルギーの無駄使いだ。このシステムを変えようって動きが何も起きなかったら、ツアーを止めることも考えなきゃな。

環境問題に高い関心を持つ彼は、二酸化炭素の排出にナーバスになっている。ライブを行えば、人々が車で会場に押し寄せ、ステージでは大量の電力を消費することになるだろう。
世界的に有名なロックバンドであるにも関わらず、ワールドツアーが本当に必要かを自問し、メディアが熱望する彼のインタビューも、可能な限りWebカメラを使って行っているみたいだ。

今回の来日公演では「グリーン電力証書システム」を導入し、二酸化炭素排出量の削減を計画しているらしい。(BARKS/革新・最尖端のレディオヘッドは、エコでも最先端
来日が決まったとなれば、見過ごすわけにはいかない。次にジェット機を使っていつ来日するかわからないのだ。冗談抜きで。


本日の1曲
Bodysnatchers / In Rainbows
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6年後のハーレム



今ニューヨークのハーレム地区は何度目かの大きな変化を迎えているようだ。今年の春には一部の地区計画基準が40年以上振りに改訂され、19階建てまでのビルが建築可能になったらしい。ちなみに「前回取材時(2002年)に改装中だった『アポロ劇場』は、お色直しを終え小ぎれいに」なったそうだ。

10月号のEsquireに目を通していると[The American Way]というコラムが目についた。ページの上部には見覚えのある表紙写真が掲載されている。そのニューヨーク特集は美しい写真と共に、ハーレム地区の移り変わりをレポートした印象的な特集だった。
そして最新号のコラムで、2002年にハーレムを取材した筆者は、ささやかな続報を伝えた。

この部屋の本棚には沢山の雑誌のバックナンバーが収納されている。もちろん、発売日から時間が経てば情報は古くなってしまう。
この建物はまだあるのか、このデリカデッセンはまだ営業しているのか、 少し前の雑誌を眺めながらそう思うこともある。

テクノロジーやタウン情報など、日々進化する分野の情報はインターネットで知ればいい。遥かなる土地の現在も、きっと誰かがインターネット上に情報を発信している。なにしろ、一度印刷されてしまった情報は「上書き」も「再編集」もできないのだ。

最新の情報が知りたければ、雑誌は情報源としてインターネットに敵うまい。
__ だって紙の情報は古いでしょう?
いつの間にかそんな価値観が定着し、情報の種類によって媒体を使い分けていることに気付く。だから、そのたった一行の報告に自分でも意外なほど驚いてしまったのだ。

同じ人間から、数年後の同じ雑誌で。余談程度にさりげなく伝えられたその一文は、まるで友人から報告を受け取ったかのような親密さを感じさせた。

(ところでこの[The American Way]を読んだ人の中に、前回のハーレムの記事を覚えている人はどれだけいたんだろう?)


本日の1曲
Ask Me Anything / The Strokes


買い物日誌004 太陽のお恵み


沖縄産 ゴーヤー
¥105
購入場所 高円寺東急ストア


クドイ性格は父親に似たのだ。いや、家族全体の性質かもしれない。我が家は、コレ美味しいね、と言えば数時間後の冷蔵庫が “コレ” だらけになる家だ。そして(ご多分に漏れず)その性質をきっちりと受け継いでしまった。

最近はゴーヤーチャンプルーを食べ続けている。最早、自炊をすればゴーヤーチャンプルーしか作らない。
「昨日もゴーヤー。残りのゴーヤはまた今夜。」

隣に座る同僚氏の耳元で囁けば、呆れ顔で「腕がゴーヤーになっちゃいますよ。」と言われる。同僚氏、毎日のように繰り返される報告を聞き飽きている様子である。そして腕を凝視して、「・・・ちょっと緑になってきたんじゃないですか!?」と大真面目な顔で言う。

8月に入ると、スーパーで見るゴーヤーは明らかに大きくなった。40センチ近くあるゴーヤーはずっしりと重く、黄色い買い物かごからはみ出るくらいだ。

ゴーヤーと挽き肉を炒め、よく水切りした豆腐をちぎり入れて焦げ目をつける。茹でた春雨を投入し、鍋肌からみりんと醤油を回し入れる。仕上げにカツオ節を盛る。

夏だ。ゴーヤーがでかい。
一食分のチャンプルーを占めるゴーヤーのパーセンテージも急上昇である。

沖縄の太陽が植物を照りつけ、大きなゴーヤー氏は高円寺にやってきた。これまでと同じ値段なのに倍の大きさのゴーヤーは、お得な太陽のお恵みなのだ。


本日の1曲
SUMMER of California 73 / Number Girl


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買い物日誌003 まなつのねどこ


シーグラスクッション丸型
¥840
購入場所 カラコ 吉祥寺店


夜帰宅して玄関の明かりをつけるまでの間、奥の部屋の暗がりから白い物体がノソノソと歩いてくる。ハク氏は部屋と部屋の境目でドサッと床に寝転んで、体の片側をぺったりフローリングに押しつけている。

そこはエアコンの風が直接あたるポジションで、要するに(暑いから早くなんとかして)という彼なりの意思表示なのだ。愛猫ハク氏、真夏はなかなか足下まで迎えに来てくれない。真夏は家を開ける間、エアコンをタイマー運転しているものの、無情にもタイマーはやがて切れてしまう。

この部屋の中でハク氏の気に入りの場所は何ヵ所かある。おそらく昼間の彼が長く滞在しているのは、窓際の木製のイスの上。そこには彼のお気に入りのクッションがあるからだ。
ふかふかのシャギークッションは肌触りがよくてボリュームがあり、四方からハク氏を包み込んでくれる。しかしいくらお気に入りとはいえ、夏はちょっと暑そうだ。

だから今年はハク氏にシーグラスのクッションをプレゼントすることにした。「シーグラス」は東南アジアの海沿いに生える植物で、香りはい草によく似ている。この上で寝転がったらさぞかし気持ちいいだろうナァ。売り場で猫の気持ちになって表面を撫でる。

クッションをガサガサと袋から取り出す。隣では神妙な面持ちのハク氏が開封の儀式を凝視している。タグを切り取り、定位置のイスの上に置いてやるとハク氏はぴょんと飛び乗った。鼻を押し付け臭いを嗅いだ後、飼い主の帰宅で一時中断した居眠りを再開した。人には判らない猫の基準をこのクッションはクリアしたようだ。

その寝心地を結構気に入っているのか、単に窓際の場所が好きなのか真意は定かではないものの、以来ハク氏の寝床としてシーグラスクッションは活躍している。

ハクの体に鼻を押し付けると涼やかな水草の香りがする。
そんな香りの残る猫を抱き締めるのは良い。真っ白な夏毛についたさわやかな残り香は、新しい我が家の夏の風物詩になりそうである。


本日の1曲
ひまわり / 大貫妙子


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フジロック通信’08 〜雷雨のち、エストロゲン編〜(3日目行動記録)


3日目の朝、起きてからテントを片付け、片道30分はかかる駐車場まで炎天下の歩道を歩く。腕に塩が浮き出るという中学校の部活以来の快挙を成し遂げる。なだれ込むように車に乗り込み、自販機で買った冷たい麦茶をあっという間に飲み干す。我々は、エアコンの素晴らしさについて今更熱く語らったあと、意気揚々と会場に戻った。

今年はドラゴンドラで行ったたしろ高原の頂上で激しい雷雨を経験した。(フジロック通信’08 〜ゴンドラは白昼夢行き編〜)恐る恐る会場に戻ると、案の定地面は思いっきりぬかるんでいる。降り続く雨の中、omo氏と落ち合う。久々の再開にウキウキが加速する。一方、雨もどんどん激しさを増していく。

近年では、フジロックの準備の一環として雨具に重きを置く人が多いみたいだ。日本の夏にフェスティバルが定着したおかげで、アウトドア市場は随分潤っていると思う。晴天の会場でHUNTERAIGLEなどの、お洒落なレインブーツを履いている人を見かけたが、3日目にしてようやく本領発揮である。上等なゴアテックス(Gore-Tex)のレインウェアを身にまとったomo氏もなんだかお洒落だ。そう、フジロッカーは雨なのにお洒落なのだ。

自分のファッションといえば、上からゴミ袋、Gパン、泥だらけのコンバースという有り様だった。あろうことか雨具や上着を全て車に置いてきてしまったのだ。これではひとり天神山ではないか!
omo氏はそんな悲惨な姿を心配しながら『まったく学習してないね・・・!』と困り顔で笑う。確かに出発前のエントリーでは偉そうにわかったようなことを書いた気がする。しかし浮き足立って雨具の存在をすっかり忘れるとは、まったく学習できていない! 雷鳴轟き数々の悲鳴があがる中、我々は愉快に笑った。

一段と激しくなる雨を避け、屋根のある苗場食堂に避難するも、すだれからも激しい雨が容赦なく店内に吹き込んでくる。これはまるで嵐である。

そんな状況でもライブは時間通りに敢行されているみたいだった。定刻丁度にGREEN STAGEのELLEGARDENに向かい、ステージ全体が見渡せる岡の上に立つ。ステージからは随分距離が離れているものの、回りの人々は手を上げジャンプし演奏に応えていた。ELLEGARDENは後方まで興奮を届けられるバンドになったのだ。
人気絶頂の中、彼らは活動休止を発表した。もうしばらくはライブを見ることができないだろう。大勢がそんな気持ちでステージを見つめていたのかもしれない。

OASISで休息を取ったあと、C氏と共にトイレに向かう。GREEN STAGEではThe Birthdayが演奏中で、その硬派なステージに予定を変更して観入ってしまう。
vo.チバ氏が『またカミナリ落ちちゃうかもよ?』と言い放った後の「KAMINARI TODAY」は圧巻だった。歌詞にずるずると引き込まれ、思わず口が開きっぱなしになる格好良さ。さすが、喋れば喋るほど人々を痺れさせる男である。

The Birthday終演後、CSSがライブ中のRED MARQUEEに移動する。収容人数5000人の巨大な赤テントに人々が押し掛け、前方に移動するのは容易ではなさそうだ。
CSSはMySpaceから一躍有名バンドになったブラジル出身のバンド。vo.Lovefoxxxは昨日のPRIMAL SCREAMのライブにもゲスト出演していた。万人受けを狙わない音作りをしながら、これだけの観客を集めるとは今のCSSの勢いはすごいものがある。


最早全身ずぶ濡れ、最後に苗場食堂を覗き見て会場を出ることにした。毎回のことながら、ゲートをくぐるときはなんとも寂しくなる。
The Birthdayのライブで『エストロゲンが出た!』というC氏、場外の岩盤ショップでアルバムを買い、それを聴きながら東京に向かう。

1997年に初開催されてから、フジロックは世界に誇れるフェスティバルであり続けている。そして自然が相手であるからこそ、参加する度に楽しみ方が増えていくフェス、とも言える。
開催当初は、それまでになかったイベント形態や海外アーティストを中心としたラインナップが注目された。でも今では、このフェスティバルのスピリットを慕う出演者と来場者たちの高い意識がフジロックを作っているのだと思う。

実は初日から『あと3日間しかないよ・・・』と溜息をついていた気の早すぎる我々であったのだが、いよいよ今年のフジロックが終わってしまった。日本には、こんなに早く終わる夏の3日間があるのだ。


本日の1曲
KAMINARI TODAY / The Birthday


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フジロック通信’08(FUJI ROCK FESTIVAL 2008参戦記)
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2006/07/10 『FUJIROCK道 〜ライブのお供にゃクエン酸編〜
2006/06/08 『FUJIROCK道 〜夏嫌いインドア人間の決意編〜
2006/06/04 『FUJIROCK道 〜冷静を装う週末編〜
2006/02/28 『FUJI ROCKのOMOIDE


フジロック通信’08 〜お食事処フジロック編〜

01 まずはかき氷で体を冷ましながら会場へ。コーラかき氷 ¥300/プリンスホテル。02 トッピングのカットマンゴーがやみつき。マンゴーかき氷 ¥400/サワディー。03 目が覚める美味さであっという間に完食。ベーコンエッグベーグル ¥500/BAGEL&BAGEL。04 今年の飯モノ一位はこれ!バジル炒め ¥800/ジャスミンタイ。

1日に4万人が来場するフジロック。会場の各エリアには沢山の屋台が出店する。ステージを移動する合間に立ち食いで手早くかっこんだり、ライブを観ながらゆっくり食べたり。屋外で食べるおいしい料理もフジロックの大きな魅力なのだ。

初日昼、会場に入って初めて食べたのはマンゴーかき氷。フェスではお馴染みのタイ料理店、サワディーが今年も出店している。見つけるやいなや駆け寄って列に並ぶ。タイ人の青年が氷をかき、カットマンゴーに練乳をかけてくれる。心の中で「more!more!」と煽りながら凝視する。

2日目、苗場プリンスホテルの出店舗でコーラかき氷なるものを発見した。初めてのコーラ味はハマる美味さで、市販されていたら毎日食べたいくらいである。キャンプサイトの入り口で売っているので、一日の行動を開始する前のクールダウンに最適。スプーンの代わりに割り箸が突き刺さるロックな一品。


苗場の夏の平均気温は25度だそうだ。連日熱帯夜が続く東京に比べれば夜は格段に快適だが、昼間はやはり暑い。クーラーの効いている施設もなく、かき氷でクールダウンしながらでないとしのげない暑さだった。かき氷は暑くて身体が動かないときの救世主である。

3日目の豪雨の最中、苗場食堂に入店。フジロッカーにはお馴染みの人気店で、豚汁や焼き魚を安価で提供してくれる良心的なお店。いつも混んでいて、なかなか座敷に座ることができないが、雑木林に突き出たステージではライブも行われるというフジロックの名物スポットである。

最大のフードエリアOASISは、目移りするような豊富なメニューが迎えてくれる。食べるものがなかなか決まらずぐるぐる徘徊してしまうくらいだ。
そのOASIS奥にあるワールドレストランは、イギリスのフィッシュ&チップス、フランスのキッシュ、スペインのパエリアなど、各国の代表的なメニューが揃った屋台エリア。木陰のパラソルには外国人氏の姿も多い。

出店している屋台のほとんどは実在の店舗からの出張である。ランチタイムはいつも混雑しているサワディー(渋谷)や、エチオピア料理の人気店、クイーンシーバ(中目黒)など、各地の厨房からフジロック部隊がやってくるのだ。
六本木に本店があるというジャスミンタイのバジル炒めを2日連続で食す。ピリ辛の粗びき鶏肉が盛られたご飯は空腹に染みるうまさだった!


2日目の朝、涼しい丘での二度寝からテントに戻ると、C氏はニコニコとベーグルを差し出した。都内ではお馴染みのBAGEL&BAGELがフジロックで出店しているのだ。

涼しい丘に引き返し、C氏の優しさを感じながらベーグルを頬張る。炭の芳ばしい香りがするベーグルは想像以上に美味しかった! 山の緑とカラフルなテント、遠くで聴こえるマイクチェックワンツー、with そよ風。胸踊るシチュエーションに幸せな気分になる。

会場内のペットボトル飲料の価格は200円、食事は500〜800円と言ったところ。ちなみに今回食べた一番高額なメニューは、ドラゴンドラで行ったたしろ高原の「アルム」で食べたカレーライス1,200円。(至極普通のカレーだが、山の頂上まで食材を運ぶことを思えば納得の価格である)

ところでフジロックはリサイクルも徹底している。場内のごみ捨て場にはスタッフが立っていて分別をレクチャーする。紙皿はつぶして捨て、ペットボトルはラベルを剥がす。お目当てのライブへと急いでいても、食べた後はキチンと分別しなくてはいけない。

3日間に出るごみの量を考えればリサイクルも大規模である。昨年回収したペットボトルと紙コップは、それぞれ今年のゴミ袋とトイレットペーパーにリサイクルされたらしい。普段リサイクルに関心がないフジロッカーをその気にさせる、お見事!な演出である。


本日の1曲
飴色の部屋 / くるり


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