Archive for the '愛しのハク' Category

愛しのハク 〜3時間のショートトリップ編〜

高円寺から中央線に乗車し東京駅へ、そこからは東海道新幹線で静岡まで高速移動し、更に東海道線に乗り換えて約30分。東京の自宅から実家の玄関までは約3時間。
ネコ氏はその間、不服そうだ。

まずは最寄り駅の緑の窓口で新幹線のチケットを購入する。盆や年末はやはり混み合う。
ネコの鳴き声を聞いた人々の反応は面白い。まずキョロキョロする。人間の目線のまま辺りを見渡してみる。人々が気のせいか、と思ったところでネコ氏がまたひと鳴きする。ミャー。

絶賛不服中のネコ氏はこの時点ではまだ結構鳴く。狭いキャリーバックの中を落ち着かない様子。体勢を変え続け、外の景色に目を丸くしている。
列に並んでいる人々は財布の中身を確かめたり、持参した時刻表に見入っているが、ネコ氏が鳴くたびに集中力が途切れる様子で目をぱちくりしている。

新幹線の切符を受け取ったら、改札脇のカウンターに向かい、手回り品の札を買う。実質的なネコ氏の乗車券は280円。買っても買わなくてもとがめられることはないけれど、なんとなく”ネコ権尊重”のために購入することにしている。
札には針金がついていて荷物に装着できる。ネコ氏のキャリーバッグに札をくくり付けたら改札を通過し電車に乗り込む。

堪忍したのかネコ氏はこの時点からあまり鳴かなくなる。しかし電車が停車するのを見計らったようにひと声。
食べ終わった駅弁の焼き魚の皮をバックの隙間から差し入れすると余計に機嫌が悪くなった。

ネコを連れていると結構色んな人に話しかけられる。
『あらァ、可愛いネコちゃん。・・・(凝視)このコ何猫?絶対洋種が混じってるわよ。品がいいお顔ねェ!』(山の手マダム)
生粋の日本猫の母と、どこの骨か知れない野良猫との息子なのだけど、とりあえずオホホーとつられて笑っておく。こちらまで口がすぼまってしまう。

『なんや猫かい!猫はナンボで乗れんのヤ?おぉ、安いのぉ!ワシも猫になりたいワ!!ガッハッハ!!』(怖いおじさん)
いかにもその道の方に話しかけられたりもする。サササと素早く移動し安全を確保する。

子供達はもそもそと動くネコ氏を容赦なく凝視した後、そっと母親に耳打ちする。他にも『獣医さんですか?』『昔ネコ飼ってましてネ・・・。』などから話が発展することもある。

ネコ氏の乗車券には乗車日と発行箇所の判子が押されている。国分寺駅、高円寺駅、島田駅。ネコ氏と暮らしてもうすぐ9年。思えば何十回も移動を繰り返してきた。それぞれの故郷に帰省する友人達を横目に、今は盆の高円寺。


本日の1曲
旅の手帖 / サニーデイ・サービス


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2006/07/18 『愛しのハク 〜人知れずタフネス編〜
2006/07/04 『愛しのハク 〜勝手にしやがれ編〜
2006/06/11 『愛しのハク 〜飼い猫も潤う6月編〜
2006/05/03 『愛しのハク 〜おかか純情編〜
2006/04/10 『愛しのハク 〜違いのわかるオトコ編〜
2006/03/16 『愛しのハク 〜眠れぬ夜は君のせい編〜
2006/03/01  『愛しのハク 〜MY CAT LOST編〜
2006/02/11 『愛しのハク 〜ルームメイトは白猫氏編〜

愛しのハク 〜人知れずタフネス編〜

猫氏と暮らしていると、家の中であっても思いがけないハプニングが起こる。
人間と別行動を決め込んでいる彼の行動を常に気にしているわけではないにしても、姿が見えなくなって数時間経つとさすがに不安になり、広くもない部屋の中をアタフタと探し回ることがある。

その日も数時間猫氏を見ていなかった。押入の布団の間や、机の下などお気に入りの場所を探してみるがやはりいない。
聴いていた音楽を止めると、天井裏からなにか音がする。頭上で何かが移動する足音が聞こえた。
・・・もしや。

当時住んでいた古いアパートは立て付けが悪く、押入の上部の天井板がずれていた。気付いてから修繕を試みたりしたがどうにも直すことができずにそのままになっていたのだが、あろうことかその僅かな隙間から猫氏が天井裏に侵入してしまった。

隙間から名前を呼ぶと確かに鳴き声が聞こえた。天井裏に人間が入る術など思いつくわけもない。逃げたいのか戻りたいのか判断はつかないが、梁にでも挟まったら助ける方法はない。そうして自分で想像してしまった悲劇に自ら焦る。

部屋を歩き回りながら名前を呼び続け、苦し紛れのおかかパカパカ作戦を興じ、ようやくハク氏が顔を出した。無事に部屋に帰還した真っ白い体が屋根裏のホコリで汚れ、まるで煙突掃除でもしてきたみたいだった。予想もしなかった事態に疲労困憊でグッタリ疲れてしまった。

またある夜はインターネットに興じていると、奥の部屋からうなり声が聞こえてきた。猫と暮らす人にはわかっていただけると思うけれど、猫も寝言を言う。何かを言いたそうに低い声でうなることがある。
また寝言か、とさして気にせずにディスプレイを見つめ続けていると、だんだんそのうなり声が大きくなってきた。当初微かに聞こえた『ぅー・・・ぅー・・・』が、『うわーぉお・・うぅ〜まぁ〜うぅ〜』とヒートアップしてきた。何事か!?慌てて猫氏の元へ駆け寄る。

しかしスフィンクススタイルでコンポの上に寝そべっている猫氏を見ても、不自然な体勢というわけでもない。しかし鳴き声は徐々に大きくなっていく。よく見ると、猫氏の爪がコンポの通気網に引っかかっているようだ。彼は爪が外れずに身動きが取れなくなっていた。

さて。どうするか。
時刻は真夜中で、駆け込む動物病院のあてもない。病院に行くにしてもコンポごと運ばなければならず、猫氏もかなりの苦痛を強いられるだろう。腕組みをして次々に計画を練っている間も猫氏は雄叫びを続けている。

駄目元で猫氏を持ち上げてみることにした。意を決して胴体を抱え、垂直に持ち上げる!

するとかちっという音がして爪が外れ、いとも簡単に持ち上がってしまった。
・・・この上ないアッサリとした結末に一番驚いていたのは猫氏だった。床に降ろした後はポカンとしていた。頭の上にビックリマークが浮かんでいた。体裁が悪いのか、必死に顔を洗ってごまかしている。そう、猫氏はごまかす。そして何事もなかったかのように彼の普段の生活が再開された。騒ぎ立てた時間はなんだったのだろうか。

現在の部屋は屋根裏に侵入できるスペースもないし、コンポも他の場所に移動した。動物は飼い主が知らない間にとてつもなくハードな状況に陥っていることがある。こちらが想像もしない困難に。
だから外出先でも心配になる。携帯の画面で現在の我が家の状況を確認できるシステムを導入したいところだが、そんなもの持っていたら猫氏が気になって仕事どころではなくなりそうで、また悩む。


本日の1曲
男子畢生危機一髪 / eastern youth


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2006/07/04 『愛しのハク 〜勝手にしやがれ編〜
2006/06/11 『愛しのハク 〜飼い猫も潤う6月編〜
2006/05/03 『愛しのハク 〜おかか純情編〜
2006/04/10 『愛しのハク 〜違いのわかるオトコ編〜
2006/03/16 『愛しのハク 〜眠れぬ夜は君のせい編〜
2006/03/01  『愛しのハク 〜MY CAT LOST編〜
2006/02/11 『愛しのハク 〜ルームメイトは白猫氏編〜

愛しのハク 〜勝手にしやがれ編〜

皆様はご自分の可愛いペットを本名以外で呼んでいないだろうか?我が家の場合、彼の本名は『ハク』であるが、実際は『ハク』以外の呼び名で呼んでいることの方が多い気がする。
人間と同居する動物達は本名以外の愛称をいくつか持っていると確信している。

さて、我が家の愛猫ハク氏の場合、一番メジャーな愛称は『パックン』である。ポップさをプラスした『パッキュン』というのもある。調子がよいとその前に『パクパク』がつくが、彼自身は心当たりのない飼い主の突然のハイテンションに目を細めている。

元々雀パイから拝借したその名前にちなんで『ペキ』『ペク』『ポク』等といった中国名、ロシア文学読書中は『ペクコフ』、北欧に思いを馳せる時は『ペクネン』である。
最近はワールドカップにちなんで『ニャッカム』や『ニャフチェンコ』と呼ばれたりしている。実家のおばあちゃんに至っては『白いの』という、それって名前じゃなくて色なんじゃないか?というアバウトさである。

好き放題に名前を呼ばれ、折角寝ていたのにTVがCMに切り替わった途端にちょっかいを出され、彼としてはたまったものではない。
愛猫を愛でるあまり歌まで作った。『俺は、ネコ的。ネコ的な男〜。』という”タフな歌詞をキャッチーに歌い切ること”がミソなのだけど、書いていてそろそろ恥ずかしくなってきたのでやめておく。

ところで動物達は人間達による好き勝手な愛称を自分の名前と認識しているのだろうか?一人暮らしの我が家の場合、自分の方を向いて飼い主が何か声を発していれば「とりあえず振り返っとけ」的心境なのかもしれない。
睡眠中には振り返るのも面倒なようで、短い尻尾を幾度か振り『ハイハイ、聞いてますヨ。』と仕方なく飼い主に付き合うネコ氏である。


本日の1曲
Waiting / The Rentals


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2006/06/11 『愛しのハク 〜飼い猫も潤う6月編〜
2006/05/03 『愛しのハク 〜おかか純情編〜
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2006/02/11 『愛しのハク 〜ルームメイトは白猫氏編〜

愛しのハク 〜飼い猫も潤う6月編〜

女性達が髪の広がりを気に病んで縮毛矯正に勤しみ、久々に開いた折り畳み傘の得体の知れない臭いに辟易する6月。先週の梅雨入りのニュースを横目に確認してからは本当に雨ばかりの日々だ。

そんな中、相変わらず我が家のネコ氏はマイペースな生活を満喫している。
しかし彼が時々蚕のような気色の悪い物体を吐き出しているところを見ると、彼も毎日毛づくろいに忙しいようだ。梅雨時期にはネコ氏の体毛も幾分しっとりしている。

毎日の浴室でのブラッシングが大好きで、こちらの入浴の気配を感じると浴室に突進してくる。ベッドの上でまどろんでいても、カリカリと食事の途中でも、トイレに入っている時でさえ砂をかけるのを忘れて突進してくる。(コイツ、ちゃんと出し切ったんだろうか?)と疑いたくなる慌てぶりだ。そしておもむろに洗い場の中央に寝転んでスタンバイしている。

これまでいくつか買ったブラシのうち、彼はラバーブラシがお気に召したようである。大きめの円錐の突起がついたブラシで優しく撫でると驚く程の毛が取れる。刺激が少なくマッサージ感覚でいられるのだろうか、ネコ氏は恍惚とした表情で『次、こっちネ』とでもいいたげに、自分で体勢を変えている。

ある日、常に浴室のバスラックに置いてあるはずのブラシが無くなっていた。目の前ですでにスタンバイ状態のネコ氏を放置したまま、全裸で部屋中を探しまわる。どこかで見たような気もするが見つからず、不服そうなネコ氏を前にひどく情けない気分であった。

そう、彼はブラッシングが大好きな余りブラシをどこかに持っていってしまう。気付くとテレビの前や、キッチンマットの上、机の下などにピンクのブラシがゴロンと転がっている。起きたら枕元にブラシが転がっていることもある。催促のつもりなのだろうか。
そのブラシはネコ氏の顔よりも大きく、結構重い。実際運んでいるところを見たことがないだけに、よく運べるもんだナとなんとなく感心していた。

ある日、テレビを見ていると浴室方面からネコ氏がヨロヨロと歩いて来た。すごい形相で必死にブラシをくわえ、足元もおぼつかない有り様だ。途中でゴトンと何度もブラシを落としながら苦心している。心の準備が無いまま視界に入ってしまったその光景に、驚きと笑いでひっくり返ってしまった。

今でも時々ブラシが無い事態に陥る。探し出したブラシでブラッシングする時、彼のパラドクス的行為に困惑しつつ、普段より丁寧にブラシしてあげるようにしている。


本日の1曲
雨の土曜日 / サニーデイ・サービス


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2006/05/03 『愛しのハク 〜おかか純情編〜
2006/04/10 『愛しのハク 〜違いのわかるオトコ編〜
2006/03/16 『愛しのハク 〜眠れぬ夜は君のせい編〜
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愛しのハク 〜おかか純情編〜

我が家のハク氏(オス・9才)はキャットフードの種類によって嘔吐してしまう。価格が安いフードはそもそもあまり旨くないのか、何かの成分が合わないのか判断は難しいが、いつもプレミアムフードを食べている。

帰省した際には地元の動物病院に連れて行く。年に1度のワクチン接種と尿検査のためだ。カルテの厚みも頼もしい。昨年あたりから嘔吐の回数が増えたのが気になっていた。獣医氏に相談し、その日初めて血液検査をすることになった。

採血は喉から行った。メガホンのようなエリザベスカーラーを首に巻かれ、恐怖におののくネコ氏をナース氏と一緒に押さえつける。ナース氏は「すぐ終わるからねェ〜」「偉いねェ〜」と子供をあやすようにネコ氏に話しかける。なんて優しいんだろう。しかしその気遣いも虚しく診察台で院内に轟く雄叫びを上げたネコ氏であった。

結果が出て再度診察室に呼ばれる。白血球の数値が基準より随分低いようだ。しかしストレスや疲労で一時的に数値が下がることもあるらしい。新幹線で帰省し、ここ数日は普段と違う環境で生活している。疲れがたまっているのかもしれないが、愛猫の健康状態が揺らいでいるのは明らかだ。気分が沈んだ。

猫に嘔吐はつきものである。毛づくろいをした毛を吐き出すのは珍しいことではない。しかし我が家のネコ氏の場合、食べたフードをそのまま吐いたり、時には苦しそうに茶色の液体を吐いたりしていた。
獣医氏は『フードが合っていない可能性もありますから、いろんなフードを交互に与えるのではなく種類を統一したほうがいいですね。』と言った。

それまでは何種類ものフードを日替わりで与えていた。人間的な発想で考えると、毎食同じフードでは飽きるだろうと思ったのだ。しかしハク氏も夏で10歳を迎える。ペットフードであまり冒険させないほうがよいのかもしれない。
その後は、なるべく一定期間を同じフードを与えてみることにした。すると種類によって嘔吐の回数が減ることがわかった。フードが切れてしまいスーパーで安売りしている一般的なフードを与えるとやはり吐いてしまう。

今はサイエンスダイエットを選ぶようになった。やはり獣医学界においてもアメリカやカナダは先進国で「アメリカの獣医が最も勧める」と書いてあれば自然に手が伸びる。

サイエンスダイエットは獣医師が最新の臨床栄養学に基づいて開発した自然派保存料使用、無着色の食事である。米国飼料検査官協会(AAFCO)という長たらしい名前の機関の基準をクリアしているそうで、メーカーのヒルズ・コルゲート社の商品は獣医療の現場でも広く普及しており、主成分や、対象年齢、その効用で何種類も商品がある。

価格は1キロ1100〜1200円くらいで安い価格帯のフードの2〜3倍に相当する。ちなみにハク氏は今「センシティブストマック」を食べている。一般的には7歳を過ぎたらシニア用のフードに切り替えるのが望ましいが、そのネーミングにそそられて購入した。
次回はウェットフード(缶詰)も購入してみたいと思う。

今のところは満足してサイエンスダイエットを日々食している。しかし猫氏のフードボウルが空になっているのに気付き、ドライフードを足して振り返ると(それじゃねぇんだよ)的な目でこちらを見ている時がある。彼はいつでもおかかが食べたいのだ。
せっかくの栄養バランスが崩れてしまうのだろうが、おかかは彼にとって待ちきれないおやつである。


本日の1曲
Ride on shooting star / The Pillows


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2006/04/10 『愛しのハク 〜違いのわかるオトコ編〜
2006/03/16 『愛しのハク 〜眠れぬ夜は君のせい編〜
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愛しのハク 〜違いのわかるオトコ編〜

本日amazonから荷物が届いた。段ボールを開封し中身をチェックしている隙に、我が家のネコ氏は素早くその中にジャンプ・インしていた。そしてちょこんと座ってこちらを見ている。まるで捨て猫気取りである。

ネコは適度な個室感覚を好む。スーパーのビニール袋に体を突っ込み、短いしっぽだけが覗いている時もある。紙袋などにはとりあえず一度は入ってみることにしているらしい。中でジッと瞑想に耽っているようだ。

困ったことに我が家に訪れる友人氏のカバンにも入りたがる。こちらが会話に熱中している隙にゴソゴソと人様のカバンに入ろうとしているのだ。もう入ってしまっている時もある。さすがに友人氏に申し訳なくなるのだが、引きずり出された当の本人は非常に不服そうだ。

そして現在、キャットハウスの購入を検討中である。
インターネットでペットグッズを検索しているとそれなりのお金を出せばなかなか素敵なハウスが買える。藤編みのドームハウスは通気性も良さそうだ。ちょっと値が張るけれど買ってみようかという気持ちになった。
しかし、購入寸前で思いとどまった。ネコ氏は気に入ったものにしか興味を示さないからだ。今までにも空振りに終わった商品はいくつもあるではないかと。

出掛けたついでに購入したおもちゃをお土産に帰宅し、購入した経緯などを嬉々としてネコ氏に説明しながらビニールを取る。その傍でネコ氏もお座りをして開封を待つ。

ジャーン!とおもちゃをネコ氏に披露した瞬間、彼はプイッと背を向けどこかに行ってしまう。そうか・・・駄目か。気に入らないのだから仕方がないが、留守番をするネコ氏のことを考え、あーでもこーでもないと考えた時間が徒労に終わった瞬間である。必死のチョイスも彼の気に入らなかった。去り行く背中を眺めながら(お前のこと、理解できていないんだナ)と少し凹む。

そのくせ三角に折り畳んだビニール袋や錠剤の抜け殻や、ビン飲料のフタなどには興味を示し、転がしまくってはヒートアップしているのだ。なんともはや。

一人暮らしをしているせいで昼間はネコ氏は部屋で留守番をしている。昨夏は記録的猛暑だったが、留守中に運転していたエアコンから発火したというニュースを見たせいで外出時にはエアコンを切っていた。

そこで「冷んやりアルミボード」なるものを購入。真夏の室内において、この上に寝転がるとさぞかし気持ちよいであろう。隣でネコ氏も開封を待つ。しかし残念ながらこれも彼の気に入らなかった。
苦し紛れにマタタビの粉末を撒いてみる、厭がるネコ氏を無理矢理乗せてみる。逆効果だった。
去り行く背中に向かって「結構高かったんだヨ」と言ってみたところで無駄だった。それ以来、外出時はドライ運転を余儀なくされている。

今座っている椅子を巡っては毎日椅子取りゲームである。彼のこの部屋の一番のお気に入りスポットのようで、普段座面をネコ氏が陣取っているために常に半分しか腰掛けることができない始末だ。腰が痛い。そんなネコ氏の為に購入したフカフカのシャギークッションも今では客人専用になってしまっている。これも駄目か。

結構お高い藤製のキャットハウスがただの爪とぎになる可能性もある。だから注文に二の足を踏む。


本日の1曲
犬と猫 / 中村一義


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2006/03/16 『愛しのハク 〜眠れぬ夜は君のせい編〜
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愛しのハク 〜眠れぬ夜は君のせい編〜

その頃自分なりに真剣に腰痛に悩んでいた。本当に腰痛持ちの人から比べたらたいしたことはないと思うけれど毎朝起きる度に寝違えたような鈍い痛みがある。どうしたものか。一応姿勢正しく寝ているはずなのに。

思い立って枕を替えてみた。当時話題だったテンピュールに飛びついてみた。ふむふむ。確かに頭にジャストフィットする。立っている姿勢のまま横になるのが好ましいらしい。当初はNASAの技術に過大な期待を寄せたがやはり腰痛は治らない。起き抜けに腰をさすり頭を傾げる。

ほぼ毎晩ネコ氏と共にベッドで寝ている。ひと声鳴いて布団に入れろとせがむ様は非常に愛しい。そして彼はモソモソと布団にもぐり込み、シングルベッドの中央に寝る。しかもベッドと垂直に横に寝る。スヤスヤと気持ちよさそうなネコ氏だが、こちらはベッドの端っこで壁との隙間に落ちそうな状態だ。退かそうとおしり部分を手で押すと不愉快なうなり声を上げるのでなんだか遠慮してしまう。そしてこちらは「く」の字で寝ることになる。確かにテンピュールは頭にフィットしているがこれでは意味がなさそうだ。

冬の明け方に寒さで目が覚めることがある。見ると隣に寝ているネコ氏に全ての敷物がかかっている。寝ている間に気付かずネコ氏に布団を掛けているらしく、彼は「かまくら」状態でスヤスヤと寝息を立てている。布団を取られるとまたしても不機嫌になるのでスイマセンネと謝りながら布団に入れてもらう。

我が家のネコ氏は一日に20時間は寝ているんじゃないかと思うくらいよく寝る。ある日帰宅すると玄関に毛布が無造作に放ってあった。

たいして気にせず靴を脱いで部屋に上がったが、よくよく考えてみるとひとり暮らしの我が家ではなかなかあり得ない光景だ。どうやらネコ氏が玄関までズルズルと引きずってきたようだ。見るとベッドから玄関までの道のりの細々したモノがなんとなく脇に移動している。驚愕の眼差しでネコ氏を見るが彼は呑気に床に寝っ転がっていた。

同じように玄関に枕が放り出されていたこともあった。テンピュールの枕は結構重い。こうしてまたもや都市伝説が生まれた。たまには違うところで寝てみようとしたのだろうか。


本日の1曲
Sleep All Day / Jason Mraz


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2006/03/01  『愛しのハク 〜MY CAT LOST編〜
2006/02/11 『愛しのハク 〜ルームメイトは白猫氏編〜

愛しのハク 〜MY CAT LOST編〜

ネコ氏と暮らし始めて1年が経過した頃、ネコ氏の人生について考えていた。外に出して自由な生活をさせてやったほうがよいのではないかと。
そのためにはそれなりの予防接種をしておいた方がよい。大学近くに合った動物病院に向かった。原付の荷台にネコ氏の入ったキャリーバックを乗せてヨロヨロと青梅街道を走った。

獣医氏に訪れた趣旨を説明すると彼は難しい顔をした。「屋外に出すということは危険が沢山あります。ワクチンは病気の感染を完全に防げるわけではないし、交通事故に巻き込まれる可能性だってあります。」彼が外に出すことに賛成していないのは明白だった。そして「家の中で安全に末永く暮らすか、楽しみを優先して危険にさらすか。」と獣医氏は静かに言った。

高校生の時、実家で飼っていたネコが亡くなった。家の前の車道で車に轢かれてしまったのだ。目立った外傷もなく、おそらく内臓破裂でこの世を去った。
のんびりと毛繕いを始めたネコ氏を眺めながら、ぼんやりとそのことを考えていた。
その日はワクチンを接種して帰宅したが、今に至るまで我が家のネコ氏はインドアキャットである。しかし脱走をしたことは数回ある。

気づくとネコ氏がいない。脱走しないように貼り付けたガムテープが緩んで、いつも締まっている網戸がほんの少し開いているのに気がついた。以前からその網戸を開ける仕草をすることがあった。そこから出て行ってしまったのだ。
当時住んでいたアパートの裏手は雑木林になっていた。そこは猫たちにとってはこの上ない遊び場であるようで、野良猫の姿もよく見かけた。

自分の猫がいなくなって初めて、雑木林に足を踏み入れた。斜面には草が生い茂り、黄色い土の中に埋もれそうな石の階段を上がると個性的なつくりの民家が見え、その奥には大きな駐車場のあるコンクリートのマンションがあった。アパートのすぐ裏手にあったにも関わらず、今まで存在すら知らなかった建物だった。

名前を呼んでみるが反応はない。部屋の窓を開け放し、一日中部屋に戻っては探しに出かけるのを繰り返した。雑木林からアパートの部屋にかけておかかをふりまき ”おかかの道” を作った。近所の人に聞いてみたところで白ネコを見た人はいなかった。気休めによく見かける猫たちに話し掛けた。
___ハク、いなくなっちゃったよ。

夜中には業務用おかかの袋をパカパカと開け閉めしながら雑木林をうろついた。彼はその音を聞きつけると家中のどこにいても走ってやってきた。しかし、その日ばかりはいくら名前を呼んでも彼は来なかった。

どこかの溝にはまって出られなくなっているのかもしれない。帰り道がわからなくなって数キロ先を途方に暮れて歩いているかもしれない。このまま外の生活が楽しくて戻ってこないかもしれない。
探せば探すほど不安が募る。頭の中を良くない妄想が支配し始めた。

翌日になってもネコ氏は戻らず、一層気分は落ち込んだ。張り紙を作ろうと考えた。電柱に貼ってある探しネコのポスターは何度も目にしたことがある。普段部屋の中で生活していたネコだ。首輪もしていない状態であの家のネコだ、とはわかってもらえないだろう。探していることをアピールしなければならない。
しかし思いついたところで到底そんな作業をする気にはなれなかった。ベッドに腰掛け目をつぶった。
友人に電話を掛け、話し相手になってもらう。必死で飼い猫を探している友人に何と言えばよいのか、彼女は必死に考えてくれていたと思う。

その時、窓の外にひょっこりハクが現れた。
こちらの大きな声で驚くでもなく、すんなりと部屋に入りごはんを食べ出した。真っ白い毛は灰色に汚れてボサボサになっていた。細かい葉っぱが体のあちこちについている。鼻をくっつけると乾燥した外気の匂いがした。足の裏には僅かに血が滲んでいる。


これが我が家のネコ氏の一番長い逃亡劇であった。
彼の生活を豊かにすることはできているだろうか。自分と一緒に暮らして満足してくれているだろうか。時々そんなことを考える。


本日の1曲
君は僕のもの / クラムボン


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2006/02/11 『愛しのハク 〜ルームメイトは白猫氏編〜

愛しのハク 〜ルームメイトは白猫氏編〜

一人暮らしをしている友人が唐突に猫を飼い始めたのはお互い浪人生だった頃だ。その後半年ほど経って子猫が4匹産まれた。
当時の彼女の家の惨状は筆舌に尽くし難いものがある。広いとは言えない部屋に総勢8匹のキャッツがいたこともあった。しかも溜り場になっていたためネコだけでなく学生達も昼夜出入りを繰り返していた。自分もそのうちのひとりであった。気をつけないと子猫を踏んでしまいそうだ。

実家には小さい頃から犬も猫もいた。彼女の部屋に入り浸っていて家の中に動物がいる幸せを思い出してしまった。
だが一人暮らしの自分にネコが飼えるのか?それでネコ氏は幸せになれるだろうか?ぐるぐるぐる。
玄関脇のちいさなカゴがお気に入りの生後2か月の真っ白いネコを「何日間か預かってもいい・・?」と消極的に提案し、自宅に連れ帰ってきた。その子猫は仲間うちで「ホワイティー(仮)」と呼ばれていた。

前にしょったリュックに子猫を入れて原チャリにまたがり真夜中の府中街道を走った。信号で止まるたびに「にーにー」と鳴き声が聞こえる。リュックから出ようとする子猫のアタマを片手で押さえながらよろよろ運転で帰宅した。そして言うまでもないがそのまま8年間我が家に留まっている。

数日後に電話で「このまま貰ってもいいかな」と告げると彼女は「絶対戻ってこないと思った」と笑った。大学1年の秋である。

リダイヤルで電話をかけたこともあるし(受話器から微かに「もしもーし」という友人の声が聞こえた)、帰宅したらクーラーがかかっていて部屋がキンキンに冷えていたこともある(夏真っ盛りのあの日)。
ある冬の日、電気ストーブに寄り添い過ぎてその真っ白な脇腹部分が茶色く焦げた。その部分をはさみでチョキチョキと切りながら、なんで気付かないのか本当に不思議だった。(友人は焦げてできた柄を見て「このまま三毛猫になるのかな?」と言った。多分ならない。)

彼は様々な都市伝説で楽しませてくれる。
普段なにも考えてなさそうに見えて季節の変わり目にはちゃんと毛が生え変わる。

彼の名を「ハク」と決定した。
こちら高円寺。1匹の猫と暮らしている。
全身真っ白。短いシッポが彼のアイデンティティーである。


本日の1曲
ミルク / Chara