Archive for the 'ライブ&音楽' Category

MUSIC with “Runningmachine”

見かけに寄らずジム通いをしている友人がいる。180センチを超える長身に強面。ベルボトムやサンダルなど、『オレ、常に流行先取りなんだよネ』と照れながら主張するファッションスタイルだが、彼が大学時代に毎日履いていた安全靴は全然流行らなかった。
ジムでのランニング用に発売されたばかりのiPod shuffleを購入したと意気揚々と話す。彼がどんな音楽をshuffleするのかは大いに興味をそそる。

彼はおもむろにあるリクエストをした。『ジョギング中にさぁ〜、聴く曲ちょっとセレクトしてよ』
それは面白そうな試みだった。しかし引き受けてからしばし戸惑う。

長い付き合いにも関わらず、彼が愛聴するミュージシャンと言えばPink FloydやLou Reedが真っ先に思い浮かぶ。現時点での我々の最大公約数はU2である。
しかし彼の性格からすると選り好みをして他の音楽を拒んでいるわけではないことがわかる。単に気に入ったミュージシャンを掘り下げるタイプの人間で、新しい音楽を聴くのが嫌いなわけではないが(ちょっとめんどくさい)だけなのだろう。
かくして我々の音楽的志向の共有を目論み、選曲スタート。


本日の3曲
〜MUSIC with “Runningmachine”〜

○ Race For The Prize / The Flaming Lips

”ジョギング”と聴いてこの曲が思い浮かぶのは、やはりミュージックビデオ(YouTube)のイメージが強いからだと思う。
彼はこんな奇天烈な危惧は装着しないだろうが、数字を睨みながら黙々と走るジョギングタイムがあってもいいはず。

○ Have You Ever Seen The Stars? / MO’SOME TONEBENDER

福岡にて結成の3ピースバンド。今夏はNANO-MUGEN FES.とFUJI ROCK FESTIVALでライブ参戦。フジロックのライブ中、近くでシャボン玉を大量放出する少年がいた。バカスカいうドラムサウンドと空高く吸い込まれるようなシャウト。意外とシャボン玉が似合うバンドであることが判明した。

○ Two Months Off / Underworld

今回真っ先に思い浮かんだ曲がこの”Two Months Off”だった。やはり一時期CATVでヘヴィーローテーションだったこのビデオ(YouTube)の印象が強い。これまで清涼感のあるエレクトロニカはあまり聴いたことがなかったので新鮮であった。連続する音と動作のもたらす高揚感はとても心地よい。


Weezer / Across the Sea

これまでに選んだ”本日の1曲”約250曲余り。しかし困ったことに、思い入れがありすぎて選べない曲も存在する。だからWeezerのAcross theSeaはいつまで経っても選べる気がしない。この10年間でもっともよく聴いた曲だろうし、これほどまでに深く共感した曲はない。

歌詞は1通のファンレターを受け取るところから始まる。差出人は日本の小さな町に住んでいる女の子。そしてそのエピソードの影響もあって、日本のWeezerファンからも人気が高い。

Weezerは1995年、1stアルバム『Weezer』をリリース。シングルカットされた『Buddy Holly』はMTVの年間ベストミュージックビデオに選出された。親しみやすいメロディーと、ロックバンドにあるまじき”普通な”ルックスで一躍人気バンドになる。

しかしリバースは戸惑っていた。同じ曲目を演奏し続けるワールドツアーのスケジュールや、同じ質問に答え続けなくてはならない膨大なインタビュー。何かの間違いでここに立っているだけだと叫びたい時もあっただろう。
誰のために歌うのか?自分の歌は誰かに届いているのか?

彼は1通のファンレターを手にして、差出人の少女のことを想像する。どんな洋服を着て学校に行っているのだろうとか(”what clothes you wear to school”)、どんな部屋に住んでいるのだろうとか(”how you decorate your room”)思いを巡らす。そして彼女の無垢さにすがりたくなる。

ミュージシャンとファンの関係なんてたかがしれている。結局のところ、本当に助けを必要としている時、彼に手は差し伸べられない。貪欲なファンは新曲を求め続けてばかりいるし、彼はロックスターで、名前も顔も知らないファンに甘えることは許されない。たとえ世界中にファンがいようとも。
今こうしてWeezerへの勝手な思いをつづっている間にも、彼は苦しみに煩悶して眠れぬ夜を過ごしているかもしれない。もっとも目の前のCD以外に何の接点があるだろう?

しかし彼の作った楽曲はショップに陳列され、ラジオ局でオンエアされ、色んな国に届けられている。楽曲に励まされ、影響を受け、知らない人の生活に入り込んでいく。顔の見えない相手に向かって彼は彼の音楽を鳴らし続ける。
どこかの土地で自分の音楽が何かの化学反応を起こしている。それはとても不思議なことで、うまく実感できないことかもしれない。

今見えている景色なんてほんの一部で、結局は何ひとつ見えていないんじゃないかと思う時もある。
しかし誰かの心の中に、ちょっとだけでも自分の存在が在ると感じることはなによりも尊いのではないか。たとえ実際に会って、語り合うことが今はできないとしても。


本日の1曲
Across the Sea / Weezer



Across the Sea

You are 18 year old girl
Who live in small city of Japan
And you heard me on the radio
About one year ago
And you wanted to know
All about me and my hobbies
My favorite food and my birthday

Why are you so far away from me?
I need help and you’re way across the sea
I could never touch you
I think it would be wrong
I’ve got your letter
You’ve got my song

They don’t make stationery like this where I’m from
So fragile, so refined
So I sniff and I lick your envelope
And fall to little pieces every time
I wonder what clothes you wear to school
I wonder how you decorate your room
I wonder how you touch yourself
And curse myself for being across the sea

Why are you so far away from me?
I need help and you’re way across the sea
I could never touch you
I think it would be wrong
I’ve got your letter
You’ve got my song

At 10 I shaved my head and tried to be a monk
I thought the older women would like me if I did
You see, ma, I’m a good little boy
It’s all your fault, momma, it’s all your fault
Goddamn, this business is really lame
I gotta live on an island to find the juice
So you send me your love from all around the world
As if I could live on words and dreams and a million screams
Oh how I need a hand in mine, to feel

Why are you so far away from me?
Why are you so far away from me?
I could never touch you
I think it would be wrong
I’ve got your letter
You’ve got my song
I’ve got your letter
You’ve got my song


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2ndアルバム『Pinkerton』は内向的、極私的楽曲が評論家の非難の的となり、前作のセールスを超えることはなかった。(しかしこの作品で日本でのWeezer人気は不動となったと確信する)

『Pinkerton』の商業的な失敗(作品は素晴らしい!)でvo.リヴァースは、しばし音楽から遠ざかり、ハーヴァード大学に入学しバンドは休止状態になってしまう。彼は『ロックバンドとしてワールドツアーを回ることがいかに退屈か』という論文を提出している。
世間から姿を消していた間、彼は左右の足の長さを揃える手術をし、不恰好な強制器具をつけ、一方で発表するあてのない楽曲を作り続けた。新作を待望する ファンは数年間焦らされ、バンドを去るメンバーもいた。

そして2001年、3rdアルバム『Green Album』で音楽シーンにWeezerは戻ってきた。アルバム発売前から、オフィシャルホームページでレコーディングしたばかりの音源を無料配信し話題になった。それらの音源はアルバムにも入っていない。

2002年『Maladroit』リリース後ジャパンツアー(”Japan World Cup Tour”)開催。Zepp公演は前列にいながらも、オーディエンスの異常な盛り上がりでステージが全く見えず(ちなみにリヴァースはヒゲ面でクッキーモンスターのようだった)、翌週も当日券で参戦。幸福な連戦であった。
8月にはサマーソニックで来日。夕暮れの”Island In The Sun”が印象的だった。

2005年『Make Believe』リリース。8月サマーソニックに出演。ニューアルバム発売直後でありながら新旧織り交ぜたセットリストでファンを喜ばせた。サマーソニックの熱烈な歓迎に応えて12月には再度ジャパンツアー(”Mos Burger Tour 2005”)で来日。新木場STUDIO COASTに参戦。
今年vo.リヴァースは日本人女性と結婚したばかりである。


半券は熱狂の記憶

部屋のあちこちをまさぐり捜し物をしている時、ふいに現れた写真や手紙に盛り上がってしまうのは世界中で行われている身近なイベントのひとつだろう。
発掘されたチケットは随分昔のものも含まれている。それ以降引越しを何度かしているにも関わらず、未だにその辺からライブチケットの半券が出てくるのは何故なのだろう。

ライブチケット氏は我が家の至る所に潜伏しているかに思われる。それは文庫本に挟まっていたり、久々に取り出した鞄のポケットに忍んでいたりする。

チケットにはアーティスト名は勿論、ツアー名、会場名、開演日時、チケット価格、整理番号が簡潔に記されている。見方によっては味気ない紙片に過ぎないかもしれない。家族が無断で部屋を片付けたなら間違いなく捨てるであろう。

それぞれのチケットに記載された詳細を眺めていると当日の光景が思い出される。
(アルバム発売直前のやつだ!)
(これ取るのに苦労したんだよナ!)
(隣で見てた人全部のパート歌ってノリノリだったナ!)
(あの客なんでシャンプーハット被ってたんダロ!?)

そうしてライブに行った日の記憶が次々に蘇ってくる。そのアーティストの音源を聴いてみたりする。
今日発掘されたチケット達は偶然にも全て違う会場だった。今は無き懐かしの赤坂BLITZにはよく行ったし、人気のないビルに囲まれた休日の日比谷野音も印象的だった。

しかし残念なことに全てのチケットが残っているわけではない。無造作にズボンのポケットに突っ込まれたチケットの半券は、そのまま洗濯機に突っ込まれたり、居酒屋のおしぼりの脇に忘れ去られることもある。

出来るだけ全ての半券を保存しておきたくなる。それは確かにその日自分がその会場に向かい、ライブを体感したという記憶の紙片なのだ。


本日の1曲
A Thousand Trees (Live Japan Only) / Stereophonics


The Pillows 〜音楽と人 presents Music & People EXTRA 2!〜 @STUDIO COAST

ストレイテナー終演後、ピロウズファンが前方に押し寄せる。会場はThe PillowsのTシャツを着ている人が一番多かったように思う。ドラムセットごと入れ替える機敏なセットチェンジの後、メンバーが登場する。好きだけれど見たことのない最後のバンド、本日のヘッドライナーはThe Pillows

フロア中程にいると、重なる人の頭が邪魔してメンバーが全く見えないこともある。今夜は思い切って前方でライブに参戦することにした。前方に留まっていたせいで、Vo.山中さわお氏との距離も10メートルくらいのところ。感動する。

MCはさわお氏が見た夢の話で盛り上がる。昨日は泥酔したさわお氏がThe Birthdayのライブに飛び入り参加してパーカッションを叩きまくり、(さわお氏曰く「ここからがリアル」)事務所に呼び出されて怒られる夢を見たらしい。

STUDIO COASTは江東区のベイエリアの倉庫街にあり、郊外のライブハウスの赴きがある。ライブハウスは週末になれば大規模なクラブ、ageHaに変貌する。敷地内にはプールも併設されていて、屋外にもステージがいくつか用意されている。
出演者の楽屋もたいそう豪華らしく、螺旋階段を上がると露天のジャグジーとハート型のベッド(!)があるらしい。さぞかし何をしに来たのかわからなくなる楽屋なのだろう。

中盤に新曲『スケアクロウ』が披露された。名曲。言葉を紡ぐように大切に歌う姿に引き込まれる。The Pillowsの音楽と自分。ライブハウスにいることすら忘れてしまうような時間だった。

曲間の静寂の中、会場のどこからか口笛が聞こえてきた。すかさずさわお氏が『犬笛?ご主人様が呼んでんのかな』、『そんなご主人様に捧げる曲』というMCから”ターミナル・ヘヴンズ・ロック”。狙っていたのかいないのか、この曲の歌詞には犬が登場する。
ポップで陰鬱なメロディー”バビロン 天使の詩”、圧巻の”ハイブリッド・レインボウ”。オリジナルアルバム14枚の長い歴史、彼等は何通りのセットリストが作れるのだろう?

The Pillows終了直後からアンコールを求める手拍子が起きる。『ジャグジーに入る寸前だったのに』とふてくされた表情をつくりメンバーが登場。笑顔のアンコールは”RUNNNERS HIGH”。オーディエンスもリズミカルな手拍子で楽曲に参加する。

ギターを掻きならしながらせわしなく歩き回り、ジャンプしフロアに膝をつく。両胸に親指を立てて静かにオーディエンスを見据える姿も、演奏を切るギターネックの素早い動作も、山中さわおはサマになる。

SETLIST

01.この世の果てまで
02.ROCK’N’ROLL SINNERS
03.Sleepy Head
04.プロポーズ
05.空中レジスター
06.スケアクロウ
07.バビロン 天使の詩
08.ターミナルヘブンズロック
09.サードアイ
10.ハイブリッドレインボウ
ーEncoreー
11.RUNNERS HIGH


本日の1曲
ハイブリッド レインボウ / The Pillows



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2006/02/13 『The Pillows


ストレイテナー 〜音楽と人 presents Music & People EXTRA 2!〜 @STUDIO COAST

”YES, SIR”から始まるとは思っていなかった。”YES, SIR”は最後の切り札ではなかったか!?驚いている暇もなく怒濤のライブが始まった。
続くは”KILLER TUNE”。セットリストのリバースが起きているのか!?にわかに信じがたい事態。そのせいで早くもフロアは沸点に達してしまった。

ライブが始まった時は前方にいたはずが、気付けば後方に、そしてまた前方に。両手を挙げれば脇腹にダメージを受ける。頭上からは興奮した若者が降ってくる。ファン泣かせの選曲も手伝ってか今夜は一段と激しそうだ。

”POSTMODERN”、”MOTIONS”が歯切れの良いリズムを刻む。セットリストには初期楽曲も含まれていた。アルバムツアーとはまた違う印象で非常に新鮮。ホリエ氏とヒナタ氏が顔をつき合わせ、オーディエンスが汗だくで拳を突き上げる。

オーディエンスの波が大きく、強烈にうねる。上階で見ていた友人氏に聞くと、フロアは総モッシュピット状態だったらしい。
その波にのまれて倒れる人多数。倒れた瞬間に互いに手を差し伸べ、フロアに倒れた他人を引っ張りあげる見事な連携プレー。消耗戦のライブではお馴染みの光景と言えるかもしれない。

”ROCKSTEADY”のイントロが始まると高まる期待。今夜はあのパフォーマンスはあるだろうか?と人知れずわくわくしていると、ドラムのナカヤマ氏がステージから客席にダイブするのが見えた。その方向を見るとナカヤマ氏の靴を履いていない足が見える。ところでこのヒト裸足でドラム叩いていたのだろうか?
彼がオーディエンスの頭上をもこもこと這っている間も、演奏は止まない。ベースとギターはリズムを刻み続け、絶頂に達したドラマーの帰還を待つ。”ROCKSTEADY”は最初からナカヤマ氏のダイブが計算されているような(!)見事な楽曲である。バスドラに覆い被さり、前面からスティックで叩いているドラマーを初めて見た記念すべき夜だった。

今夜は音楽誌「音楽と人」主催の対バン企画『Music & People EXTRA!』。共演するのはThe PillowsとThe Birthday。
ストレイテナーは2004年にThe Pillowsのトリビュートアルバムにも参加。メンバーが敬愛するThee michelle gun elephant解散後、Vo.チバ、Dr.クハラ両氏が結成した新バンドがThe Birthdayだ。

『憧れのバンドと対バンで来て、しかも楽屋も一緒です』とMCでホリエ氏は楽しそうに語り、演奏では一転、壮絶なモッシュを巻き起こして去っていった。


SETLIST

01.YES, SIR
02.POSTMODERN
03.KILLER TUNE
04.MOTIONS
05.PLAY THE STAR GUITER
06.泳ぐ鳥
07.DISCOGRAPY
08.The Novemberist
09.Melodic Storm
10.MAGIC WORDS


本日の1曲
POSTMODERN / ストレイテナー



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9/7 『The Pillows 〜音楽と人 presents Music & People EXTRA 2!〜 @STUDIO COAST

8/1 『ストレイテナー @FUJI ROCK FESTIVAL2006
3/15 『ストレイテナー @恵比寿みるく
1/18 『ストレイテナー @渋谷QUATTRO


A Song For Kids!

今年行われたELLEGARDENのSpace Sonic Tour。そのスケジュールを知った日から参戦を意気込んでいたものの、競争率の高いチケットを獲得するのは容易ではなかった。そして先週、Zepp Tokyoでのツアーファイナルを収録したDVD、”Doggy Bags”がリリースされた。

正直に言うと、初めてDVDを観た時、違和感を感じた。演奏は中断し、MCもこれまでのようなおちゃらけた調子がない。演奏は申し分ないが、どこか距離を感じさせる。バンドがナーバスになっているのは見てすぐにわかった。

vo.細美氏はセキュリティーが客席にも配置されているのを知ると演奏を止めた。フロントエリアは彼らの音楽を愛してくれるオーディエンスの為だけにある。
『フロントエリアにはお前ら以外は絶対入れないから、マジで。』
彼が守ろうとしているもの。自分の音楽を支持し集まってくれるキッズ達。きっと、それだけだろう。

ナーバスなMCに戸惑うだろうか?
場違いな野次が増え、望まれない観客も増える。参加を望む全てのファンにチケットは行き渡らないのに、インターネットオークションでは高額でチケットが取引されている。
もっとも、ツアーファイナルは同じ会場で2日連続で行われた。止むを得ない理由で演奏が中断したなら、前日の映像と差し替えることもできたはずだ。しかし、この日に中断した演奏も、取り繕うようなMCも、ほとんどそのまま収録されている。

会場の熱気に包まれて、その感触を確かめ、言い聞かせるように。ライブ中の彼は必死で何かを取り戻そうとしているように見えた。大切なものを失わないように、戦っているように見えた。

2005年リリースされた”Bad For Education TOUR LAST BOOTLEG”は、まさに今新たな一歩を踏み出そうとしているエネルギーに満ちていた。
そして友人から借りた”MY OWN DESTRUCTION TOUR BOOTLEG”は2002年12月のライブが収録されている。

ライブハウスに充満する親密な空気が伝わってくるようだった。伝染するハイテンション。MCの下ネタ。挙げ句の果てにはギターを抱えたまま客席にダイブ!
本編が終了しても鳴り止まないアンコールに『もうやる曲がないんだよ』と頭を抱えている。

(この人達、終わったら滅茶苦茶うまいビール飲むんだろうナァ)と思う。
ステージではしゃぎまくる彼等を見ていたら、フッと記憶の中の風景が襲ってきた。それは学生の頃にほっつき歩いた、オレンジ色に染まった夜の繁華街の風景だった。まとわりつく街の空気に若さのエネルギーを撒き散らしていた。あの頃、自分の無力さに打ちひしがれながらも、何者にでもなれるような高揚感があった。

増える動員数と、ライブに行きたくても来られない人々。少なくなる口数と愛嬌のある暴言。単純に楽しいだけの時間は終わってしまったのだろうか。
同じ時期に古いDVDを見たことで、一気にヒストリーを遡ってしまったような、そんな気分になる。

有名になるということは、必ずしも幸福ではないかもしれない。
しかしこのDVD”Doggy Bags”を見て、彼等が大切にしているものはありありと実感できる。そこには下世話な映画よりも眩しい真実がある。


本日の1曲
金星 / ELLEGARDEN


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7/16 『ELLEGARDEN @NANO-MUGEN FES.2006


Red Hot Chili Peppers @FUJI ROCK FESTIVAL2006

キャンプサイトから鼻息荒く会場に辿り着いた頃には、グランドは人で埋まっていた。開演まではまだ1時間弱あるはずだが、続々と人が集まってくる。
グリーンステージ後方はなだらかな斜面になっていて、そこに立つとステージからの距離は遠いが全体が見渡せる。目の前が泥のたまりになっていたせいで、視界も良好。今夜はここからライブに参加することにした。

メンバーが登場しセッションから『Can’t Stop』が始まると人々が一斉に興奮したアクションでバンドを歓迎する。
そして今回のライブでジョン・フルシアンテの魅力に覚醒したことに触れないわけにはいかない。長年のRed Hot Chili Peppersファンの友人氏は『レッチリはジョンのバンド』と言いきる。

Red Hot Chili Peppersの狂信的ファンであったジョンはギタリストとしてバンドに加入。当時はまだ18歳だった。しかし加熱してゆくバンドの状況に馴染むことができず、突然の脱退。(92年の来日公演中の出来事)その後ドラッグ中毒で廃人同然になってしまう。
その間バンドは何人ものギタリストを迎えるが、長続きしなかった。当時の発言や音源を遡ると、いかにジョンの不在が大きかったかがわかる。結局、誰もジョンの替わりにはなれなかった。
98年、暗黒の年月を経てジョンが奇跡的にバンドに復帰。翌年『Californication』をリリース。世界最強の地位を不動にする現在のメンバーが揃った。

ステージ脇のスクリーンにジョンの手元が大写しされる度、一段と大きくなる歓声と、感嘆の溜息。隣にいた見ず知らずの彼も『1時間以上やってんのに、この指の動きは尋常じゃねぇ・・・!』と唸っていた。

ジョンのコーラスは高音と低音を自在に行き来し、その歌声は夜空に突き抜けていった。終盤で披露されたジョンのソロ、ビージーズの”How Deep is Your Love”に場内は静まり返る。圧巻だった。佇まいも、そのプレイも、歌声も、彼の全てがその場にいた人々を魅了した。割れんばかりの歓声が包む。それはまさに歴史に残るギタリストの存在感だった。

bassフリーとジョンが至近距離で向き合うお馴染みのポーズで『By The Way』が始まると本日一の大歓声。『Me&My friends』では個人的に雄叫び。
ライブ中、スクリーンにはエフェクトがかかったメンバーのシルエットが映し出されていた。こういうサイケデリックな演出がこのバンドにはよく似合う。

今年は早々と土曜日のチケットが売り切れた。例年土曜日はラインナップが豪華だと言われるが、今年の売れ行きは尋常ではなかった。そして言うまでもないが土曜日のヘッドライナーはRed Hot Chili Peppersだった。

グリーンステージの最大収容人数は4万人。彼等は広大なグリーンステージに集まったオーディエンスに最高のパフォーマンスを見せつけ、フリーは逆立ち(!)で帰っていった。


SETLIST

01.Can’t stop
02.Dani California
03.Scar Tissue
04.Charlie
05.Fortune Faded
06.Readymade
07.Throw Away Your Television
08.Snow
09.Me&My friends
10.Wet sand
11.Right On Time
12.How Deep Is Your Love(Bee Gees by John)
13.Don’t Forget Me
14.Tell Me Baby
15.Californication
16.By The Way
(encore)
17.Give It Away


本日の1曲
Give It Away / Red Hot Chili Peppers



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08/07 『FUJIROCK道 〜グッバイ・サンキュー!編〜
08/05 『FUJIROCK道 〜0時を過ぎても!編〜
08/04 『FUJIROCK道 〜滑降覚悟のテントライフ編〜
08/03 『FUJIROCK道 〜騒いでも騒がなくてもハングリー編〜
08/03 『ASIAN KUNG-FU GENERATION @FUJI ROCK FESTIVAL2006
08/02 『FUJIROCK道 〜魅惑のエンバイロメント編〜
08/01 『ストレイテナー @FUJI ROCK FESTIVAL2006
07/31 『FUJIROCK道 〜ハロー苗場!高速移動編〜』 
07/27 『FUJIROCK道 〜出発直前!いざ苗場編〜』 
07/10 『FUJIROCK道 〜ライブのお供にゃクエン酸編〜
06/08 『FUJIROCK道 〜夏嫌いインドア人間の決意編〜
06/04 『FUJIROCK道 〜冷静を装う週末編〜
02/28 『FUJI ROCKのOMOIDE


ASIAN KUNG-FU GENERATION @FUJI ROCK FESTIVAL2006

vo.後藤氏は今までの活動はグリーンステージに出るためだった、と語る。そして2006年のFUJIROCKで遂にASIAN KUNG-FU GENERATIONの名前が巨大スクリーンに映し出された。

彼等が初めてフジロックに出演したのは深夜のRookie A GoGo。世間的に知られる前、まさにルーキーとして、そのステージに登場したのは2003年。奇しくも自分が初めてFUJIROCKに参戦した年だ。まさか今になってこんなに後悔するなんて思ってもいなかった。

そしてその翌年、2004年には巨大な赤テント、RED MARQUEEに登場する。わずか1年の間に収容人数5000人の会場にステップアップした。そしてそして。今年は遂に一番大きなグリーンステージに登場する。

始めてグリーンステージを見た時、桁違いのステージの大きさと、背後にそびえる山の風景に呆気にとられた。頑丈な骨組みで、ずっしりと真っ黒い。数々のアーティストが伝説のライブを行った巨大なステージは威厳に満ちていた。

PA卓左手に友人達と並び、ステージを見据える。ステージまでは50メートル程だろうか。そう言えば一緒に参戦した友人2人と一緒に見たのはこのライブだけだった。

先日開催されたNANO MUGEN FES.のタオルやTシャツもよく見かけた。しかしここはFUJIROCK。ほとんどが洋楽目当てのオーディエンスと言えるだろう。メンバーもいつになく緊張しているように感じた。現在のASIAN KUNG-FU GENERATIONをアウェイの空気が包むことはFUJIROCK以外には無いかもしれない。

バンドが登場し、大きな歓声が上がる。演奏が開始される前の身勝手な不安はスタート同時に払拭された。『Re:Re:』と『ロードムービー』はバンドセッションから徐々に始まる構成で、重厚で美しいメロディがイントロに差し掛かると、ファン達は歓声を上げ、一斉に拳を振り上げている。
集まったオーディエンスは『ループ&ループ 』で跳ね、『リライト』では大合唱が巻き起こる。そしてインディーズ時代の曲でありながら、ここ最近のライブでよく演奏される『羅針盤』。

”情熱の羅針盤は 君の胸にはありますか?”
ライブで聴く度にこの歌詞にいつもはっとさせられる。彼はインディーズ時代のハングリーな曲を歌い続けている。『羅針盤』は今日のこのステージにもっともふさわしい曲だと感じた。

今年で10周年のFUJIROCKが初めて開催された時、我々の世代は10代後半。まさに音楽への目覚めと同時に始まったフェスティバルと言える。
それまでは大規模な音楽フェスティバルなど、遠い外国の話でしかなく、海外の有名アーティストが日本のフェスに集結するなんてにわかに信じがたい衝撃があった。

その衝撃と共にロックに覚醒した我々フジロック世代にとって、やはり特別なフェスと言わざるを得ない。フジロックのグリーンステージに立つことを明確な目標にする若いバンドも多い。そしてほんの少し前まで、その中に後藤氏はいた。

後藤氏は『言いたい事が沢山ありすぎて、何を言ったらいいのかわからない』と言葉を詰まらせた。
苗場の山々に自らの残響音を染み込ませようとしている。ラストの『月光』の長い長いシャウトに彼の想いを見た気がして、どうしようもなく胸が熱くなった。


SETLIST

01.センスレス
02.Re:Re:
03.君という花
 MC
04.ブルートレイン
05.ブラックアウト
06.ロードムービー
07.桜草
 MC
08.ループ&ループ
09.リライト
10.羅針盤
11.月光


本日の1曲
羅針盤 / ASIAN KUNG-FU GENERATION


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07/17 『ASIAN KUNG-FU GENERATION @NANO-MUGEN FES.2006』 
06/27 『ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour2006 -count 4 my 8 beat- @ZEPP TOKYO
04/28 『ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour2006 -count 4 my 8 beat- @千葉LOOK
02/02 『夏の日、残像

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08/07 『FUJIROCK道 〜グッバイ・サンキュー!編〜』 
08/06 『Red Hot Chili Peppers @FUJI ROCK FESTIVAL2006』 
08/05 『FUJIROCK道 〜0時を過ぎても!編〜
08/04 『FUJIROCK道 〜滑降覚悟のテントライフ編〜
08/03 『FUJIROCK道 〜騒いでも騒がなくてもハングリー編〜
08/02 『FUJIROCK道 〜魅惑のエンバイロメント編〜
08/01 『ストレイテナー @FUJI ROCK FESTIVAL2006
07/31 『FUJIROCK道 〜ハロー苗場!高速移動編〜』 
07/27 『FUJIROCK道 〜出発直前!いざ苗場編〜』 
07/10 『FUJIROCK道 〜ライブのお供にゃクエン酸編〜
06/08 『FUJIROCK道 〜夏嫌いインドア人間の決意編〜
06/04 『FUJIROCK道 〜冷静を装う週末編〜
02/28 『FUJI ROCKのOMOIDE


ストレイテナー @FUJI ROCK FESTIVAL2006

フジロック2日目、夕刻近くのホワイトステージは雨に見舞われた。
直前に降り出した雨は開演時刻が近づくにつれ本降りになった。

雨具をテントに置いてきたせいで軽装のままだが気にならない。このアクトで盛り上がることは最早数ヶ月前からの計画であったからだ。
結果、今回のフジロックで見た数々のライブの中で、一番雨に濡れ、一番汗をかき、喉は完全に潰れた。

SEがないせいで開演前は静かだった。雨が降りしきるグランドに集まった人々はサウンドチェックを眺めたり、目を閉じたりしていた。自分のいた5列目あたりは個人参戦が多かったように思う。そしておもむろに始まったSEが止むとメンバーが登場し、どっと観客が押し寄せた。

Drのナカヤマ氏はステージ前方でひとしきり客席を煽った後、豪快にドラムセットをまたいで(正確に言えばバスドラの上を歩き)定位置に戻る。始まる前から闘志剥き出しのスタイルはテナーファンにはお馴染みの光景である。bass日向氏も客席に向かってシャウトを繰り返す。登場して早々飛ばしまくるメンバー、早くも完全勝利の予感。

”TRAVELING GARGOYLE”でbass日向氏は拳を振り上げ、voホリエ氏がジャンプする!drナカヤマ氏の雄叫びも聞こえる。
『雨降るかもしれないからセットリストに入れたんだけど、ホントに雨になっちゃってごめんなさい』というMCの後、ストレイテナーの雨の歌、”TENDER”が披露された。
そしてオーディエンス待望の”DISCOGRAPHY”や”KILLER TUNE”では容赦ないモッシュが巻き起こり、とどめの”YES, SIR”で興奮は最高潮に達した。

降りしきる雨が一層興奮を呼ぶ。voホリエ氏は終始笑顔で、フロアに仰向けに倒れギターを掻き鳴らしている。普段より親密なMCと彼のその表情を見ると、若いアーティストにとってフジロックがいかに特別なイベントかがわかる。

ストレイテナーは当初、ドラムとギターボーカルの二人だけのバンドだった。当時の音源は今も支持が厚い。
ファン達がリリース済みの音源に満足している時も、彼等は曲を作り続けている。ワンマンでもないフェスティバルで、リリース前の新曲を披露した彼等のアクトにアーティストのタフネスを見た気がした。


SETLIST

01.TRAVELING GARGOYLE
02.PLAY THE STAR GUITAR
03.Dead Head Beat
04.The Novemberist
05.Discography
06.Blue Sinks In Green
07.Barsarcar Tune(新曲)
08.KILLER TUNE
09.YES, SIR
10.TENDER
11.Melodic Storm
12.MAGIC WORDS


本日の1曲
YES, SIR / ストレイテナー


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03/15 『ストレイテナー @恵比寿みるく
01/18 『ストレイテナー @渋谷QUATTRO

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08/07 『FUJIROCK道 〜グッバイ・サンキュー!編〜』 
08/06 『Red Hot Chili Peppers @FUJI ROCK FESTIVAL2006』 
08/05 『FUJIROCK道 〜0時を過ぎても!編〜
08/04 『FUJIROCK道 〜滑降覚悟のテントライフ編〜
08/03 『FUJIROCK道 〜騒いでも騒がなくてもハングリー編〜
08/03 『ASIAN KUNG-FU GENERATION @FUJI ROCK FESTIVAL2006
08/02 『FUJIROCK道 〜魅惑のエンバイロメント編〜
07/31 『FUJIROCK道 〜ハロー苗場!高速移動編〜』 
07/27 『FUJIROCK道 〜出発直前!いざ苗場編〜』 
07/10 『FUJIROCK道 〜ライブのお供にゃクエン酸編〜
06/08 『FUJIROCK道 〜夏嫌いインドア人間の決意編〜
06/04 『FUJIROCK道 〜冷静を装う週末編〜
02/28 『FUJI ROCKのOMOIDE


汗と毛玉にまみれて

ライブにはじっくり観たいライブと一体となって楽しみたいライブがある。その「計画」に乗っ取り着替えを持っていくかを決める。その日のライブの”参加方法”は大抵は会場についてからに任せているのだけれど、実は計画などたてたところで、行きと同じTシャツで帰ることは珍しい。

白熱したライブでは着ていたTシャツが汗だくになる。モッシュが激しいライブではこすれて毛玉が出来、汗でぐっしょり濡れたその水分は最早自分の汗なのか他人の汗なのかわからない状態だ。

そして大抵はライブ会場から電車を乗り継ぎ自宅へ帰らなければならない。そういう時は着替えとして当初買うつもりのなかったTシャツを買う。数年前のWeezerのライブで、想定外に盛り上がってしまった時はいまいち(というか、かなり)ダサいWeezerTシャツを着てゆりかもめと中央線を乗り継いで帰宅しなければならなかった。

ライブ会場で人々は多種多様なバンドTシャツを着ている。ライブ開演前に彼らの後姿を眺めるのは結構興味深い。(へぇ、あのバンド聴いてる人多いんだナ)とひとりで納得し、(あ、これ前のツアーのTシャツだワ)とバックプリントのツアー日程を懐かしく眺めたりする。

バンドTシャツというのは、これが結構自己主張になっている。だから本当に好きなバンドのTシャツしか着たくない。Tシャツを着るということは、ファンを公言することにもなり、マナーが悪ければそのアーティストのイメージも悪くなりかねない。もちろんその逆もある。

ライブ会場では大抵物販スペースが設けられている。そこではTシャツや、タオルや、ツアーグッズが販売されていて、開演中を除くほとんどの時間、人々が殺到する。
本でも音楽でも、本来自分の好きなものを人に知られるのが苦手なタイプであるから、自分が好きなバンドのTシャツを着るのも、実は結構恥ずかしい。


本日の1曲
Surf Wax America (Live) / Weezer